#ボクシング ページ34
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しばらくして作業着を脱いだ明智くんが戻ってきた。よかった、とりあえず来てくれるみたい。
私達は原田先生から送られてきた地図を頼りに目的地へと向かう。
着いた所は大きな倉庫みたいな場所だった。中に入るとそこには何故かクラスのみんながいた。
「お前達、何でここにいるんだ?」
「のぶおがここで授業するって...」
原田先生が?そう思っていると急に音楽が流れる。プロレスの登場曲みたいな、そんな音楽。
先生はチェーンを地面に叩きつけながら出てきた。後ろにはガラの悪いおじさんもいる。...あれが、明智くんのお父さん?
その人は苛立ったように声を上げる。
「何だよこれ。コイツ頭おかしいんじゃねぇの?!」
「あー...すみません否定できない...」
「...何してんの?」
「こっちが聞きてぇよ」
ガラの悪いおじさんはやっぱり明智くんのお父さんだったらしい。原田先生はお父さんの手首につけていたチェーンを外して言う。
「私達は明智が学校を辞めさせれる事も、金返させられてる事も納得できない。でもアンタは明智に金を払わせたい。
これって賭けの対象にならないかしら?」
「賭け...?」
「そう!ボクシングで勝った方の願いを聞く。
明智が勝てば借金は無し、学校も辞めない。父親が勝てば学校辞めて働く」
「先生!親子で殴り合いさせるなんてそんな...」
「いいじゃない、暴力ばっかしてる親子なんだから」
父親がそう言われるのは分かるけど、明智くんがそう言われるのはわかんない。そう思い首を傾げていると先生が話を続ける。
「父親は息子への肉体的な暴力。明智は若林への精神的な暴行。
明智、お前もこの父親と一緒なんだよ」
その言葉を聞いたとき、明智くんの肩がピクリと動いた、気がした。
帰ろうとする父親を先生が止める。先生はほんとにボクシングをやらせる気なんだ。
「明智、どうすんの」
「......どうでもいーよ」
そう言うと明智くんはグローブをつけに歩き出す。私はその背中をただ見詰めることしか出来なくて、どうしたらいいのか分からなかった。
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。 - 桐山漣くん本当にかっこいいですよね、ぜひテニミュをご覧下さい。 (2020年8月21日 0時) (レス) id: 0324f0d530 (このIDを非表示/違反報告)
まるる。(プロフ) - のりぴーさん» コメントありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです...!更新頑張ります!! (2019年6月3日 20時) (レス) id: 96c7a89dfd (このIDを非表示/違反報告)
のりぴー(プロフ) - 初めまして!面白くて全部読んじゃいました!笑 先生に片思いしてる主人公と主人公に興味のあるメイン3人辺りの関係がとても素敵です!更新頑張って下さい! (2019年6月3日 14時) (レス) id: b1332d8c7b (このIDを非表示/違反報告)
まるる。(プロフ) - 雪柳.さん» コメントありがとうございます! 神作品だなんて勿体ないお言葉ありがとうございます...これからもよろしくお願いします!! (2019年6月2日 22時) (レス) id: 96c7a89dfd (このIDを非表示/違反報告)
雪柳.(プロフ) - 初めまして!吉沢さんの小説を書いている雪柳と申します!田中先生の小説が見当たらなくて自給自足しようかと考えてた時にまるる。さんの作品に出会いました。神作品でこれからも一読者として応援しています! (2019年6月2日 11時) (レス) id: 6f46d7d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるる。 | 作成日時:2019年5月26日 10時