記憶の中の私へ (ページ10)

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轟side

会場の雰囲気に呑まれそうになりながらも何とか自我を保って志操を探す。

端から端まで舐め回すように会場を見渡す。
近くにいる緑谷も一緒に探しているがなかなか見つからない。

『Not seesaw!!』

「ha ha ha!!!」

どこからか楽しそうな声だって聞こえてくる。

「シー…ソー？」

聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で緑谷が呟く。

「シーソー、シーソウ、シソウってことなのかな……」

どことなく聞いたことのある声と緑谷の推理によって(俺らの中では)この会場内に志操がいることが分かった。

「お、緑谷お前凄かったんだな。」

「Shisou?」

『Not Shisou. Jamie!』

あぁ、確定だ。ハッキリと志操と聞こえた。
自分の耳を頼りに声のする方へと足を動かす。
すると、

「……志操」

『…』

話しかければ彼女はひどく驚いた顔をしていた。
名前を呼んでも下を向いて黙り、どうしたらいいのかも分からない。

「お前、俺の事覚えてるか？」

『覚えてないみたいです、失礼ですがどちら様ですか？』

此奴は間違いなく志操だ。
志操は嘘をつくとき左手の親指にはめてある指輪を触る。
高校の頃から、ずっと。

『ちょっと話さねえか？』

『……はい』

渋々承諾をしてくれた。
くるりと後ろを向き、友人らしき人に何か話してる。
その背中がなんだか自信があるように見えて、
志操も変わったことを思い知らされた。