記憶の中の私へ (ページ11)

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「志操」

名前を呼ばれてもただただ下を見ることしか出来ない。

あぁ、どうしよう、どうやって誤魔化そう。
一か八かの賭けで私は他人のフリをしてみることにした。

「お前、俺の事覚えてるか？」

『覚えてないみたいです、失礼ですがどちら様ですか？』

さぁどうだ。私の中の轟焦凍は騙されやすい印象のままだった。これもそのはず高校時代は結構ジョークに引っかかりやすかったし。

「ちょっと話さねえか？」

あちゃーーーー

凄い剣幕で言われちゃ拒否はできない。

『……はい』

か細い声で返事をして後ろにいるレアとマークに一言断りを入れる。

『 I'll be right back. (すぐ戻るね)』

「 You deserve it.(ざまぁみろ)」

「Ok.」

『 Be prepared,Leah!(レア覚悟しとけよ)』

「Haha」

なんで私だって分かったのだろう。
いっその事全て聞いてしまおう、決心して後ろを振り向いて

『いいよ。』

「ああ。」

私もあの時とは違うんだよ。

『わ、』

手首を捕まれ彼がずんずん歩いていく。
高校時代よりも心做しか背が伸びている気がする。
それと同時に歩幅も広くなっていてまあまあ長身の私も少し早足になる。

『…どこ行くの？』

私の言うことも聞かずにどんどん進んでいく。

着いたのは中心から離れた会場の端の方。
あまり人もいなくてさっきとはまるっきり違う会場の雰囲気に少し驚く。

ピタッと止まって私の手首を解放した後に合った彼の目が少し揺れ動いた。