にー。 ページ2
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けれど、そんな彼でも時たまに声を発することがあった。
例えば礼を言う時だ。
そう。きちんと礼は言うのだ。彼は絶対に良い人であろう。
その際に何故か彼が敬語であることに気付き、多少の距離感は感じられたものの、
それが彼のスタイルなのかもしれない(?)と思って、
私も敬語で話しかけたりした。たまに。
そうして最近やっと話しかければ大体答えてくれるようになった。本当に大進歩。
初めて彼の声を聞いた時その透き通った声にどれほど感動したことか。
何とか声を出させようとし、つまり礼を言わせようとして尽くすわ尽くす。健気な女だわ私って。
そうこうしてるうち大分仲が良くなったと思っている、ちなみにまだお互い名前で呼んだことはない。
余談だけれど、隣の彼は、実はクラスの女子に人気があったりする。
何たって秘かに「王子」とか呼ばれてるくらいだ。
まぁ、隣の彼、イケメンだわ、細身だわ、背は高いわ。ポイント高いよね。
フランクに喋ったりは絶対にしないけれど、それがまた謎を呼び、「全女子に平等」的に捉えられ人気を呼んでいる、ようである。
わからなくはなかった。
「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
長いこと読者さんに説明を施していると退屈さにまた眠気が襲ってきて本日何度目かわからない欠伸を漏らす。
「今の欠伸誰だー」
「クスクス……」
教科担任が２回目になって目ざとく反応する。
ついでにクラスメイトの笑い声もセットで。
「ふぁーい………」
「……寝不足…？」
珍しく隣の彼から話しかけてくる、しかもタメ口で。
単純なことに、私が一日の中で気分が浮きだっちゃうのはこう言う時だ。
「そう言うんじゃないんだけど………
君は眠くならないの？」
「ならないよ」
隣の彼は含み笑いで小さく返した。
こう言う時ふいに心が跳ねる。
得も言われぬ感覚に浸かる。
急に、面倒臭かったアレコレやイザコザがどうでも良くなって、明日きっと良いことがあるかもしれないようなそんな気分に。彼は唐突にする。
昨日より今日、今日より明日はもっと隣の彼と仲良くなれたらいいなと私は思う。
思っている、いつからか。
そしていつか、彼の名前を呼びたい。
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作者名：いのありCONAイチゴ | 作成日時：2017年9月3日 0時
