山小屋 ページ13
ノエルはそれを聞くと、手を強く握りしめ、俯いた。その表情は、焦りや、何かを見透かされたような、そんな顔だった。
「そして、それを支えるのもまた…… 大悪魔の仕事かもしれんの。おヌシが悪魔としてどうあろうが、おヌシの自由じゃ。ただし──大悪魔としての威厳を忘れるな」
「……」
カロンも黙りこんだのを見ると、スピカはへらへらと笑い、さらに言った。
「ではさらばじゃ、 “ 魔人集団 ” 諸君。次会うときは敵かのう？味方かのう？」
瞬間、辺りの風がぴりぴりと音を立てた。──スピカが、強い力を放っていた。回りの木々が揺れ、地面の雪が勢いよく巻き上がり、顔に飛んでくるものもあった。
「わざわざ見逃してやったその命…… ちゃんと妾を楽しませるために使えよ？」
言い放つと、彼女は踵を返し、去っていった。
私たちは、しばし呆然と、その場に立っていた。
＊＊＊
「……山小屋って、ここですか？」
「ええ」
スピカが去った後、私たちはノエルとカロンが二ヶ月ほど身を潜めていたという山小屋に移動したのだった。
山小屋は当然雪が被っており、クモの巣が張っている辺り、元々あまり使われていなさそうな感じがした。
中に入ると、いくつかの物資に暖炉、ベッドくらいしか置いてなかったが、短期間過ごすには充分だろう。少なくとも、身体は休ませられるはずだ。
ベッドが二つしかないため、二手に別れて寝ることにしたが、さすがに誰かの横に寝るような事は出来ない。
まず怪我人のオスカーを寝かせて、もうひとつのベッドにノエルに寝てもらうことにした。だが、彼女は少し戸惑っていた。
「本当にいいんですの？ A。それではあなたが……」
「私は捕らわれてる間も、ベッド使わせてもらってたので。二人にちゃんと休んでもらった方がいいです」
小屋にあった椅子を引きずり、オスカーのベッドの横に置いた。恐らく大丈夫だろうが、万が一容態が急変した場合、体調をすぐに看るためだ。
また、自分の荷物はどうにか持ち出せたため、薬草はまだいくつか残っていた。そのうち数種を組み合わせて栄養剤を調合し、皆に飲ませることにした。
薬草を磨り潰し、他の粉末と混ぜ、水に溶かしたりするうちに、栄養剤は出来上がった。なかなか上手く調合できたので、良かった。草と
彼はまず栄養剤の不可思議な匂いをかぎ、その色を見つめてから、口にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅ゆずりは(プロフ) - Cyanさん» はじめまして。いつも読んでいただいて&評価ありがとうございます(*^^*)頑張ります♪ (2021年8月22日 22時) (
レス) id: e49f68cb2e (このIDを非表示/違反報告)
Cyan - いつも楽しみながら読ませて貰ってます！評価押そうと思ったところ、誤タップで星9になってしまいました、すみません……断然星10の作品なので、これからも応援しています！ (2021年8月20日 22時) (レス) id: e581c2c6f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
