警察署の地下室 ページ6
人外はそう言い、私の横の薄汚れたオフィスチェアを指差した。言われるがまま腰掛け、今度は私が口を開く。
「……あの、あなたたちは……」
「アア、申シ遅レタナ。ワタシハ…… マア見テノ通リ、 “ 悪魔 ” ダ。名ヲ『グーフォ』トイウ」
グーフォ…… Gufo。意味は梟、だろうか。
グーフォは老人に近づくと、その肩をぽんぽんと叩いた。
「モウ分カルダロウガ、コイツハ四年前、『薬識の悪魔』デアルワタシト契約シタ愚カナ人間ダ」
「……僕は、『薬識の魔人』。名乗ル名は無いかラ、好きに呼んでくレ」
二人とも簡潔に自己紹介をしてくれたが、それはつまり──
「えっと、……私を、その…… 薬師にしてくれるのですか?」
「あア。僕がこいツから得た知識、そレを君に授けヨう」
「そんなあっさり……」
「先に言ッておコうか。僕は──もウ長くナいのサ。このマま、グーフォかラ得た知識を朽チさせるノも勿体なイかラね」
「……!」
悪魔と契約するということ。それはつまり、何かを得るが、何かを失うのだ。得たいものは己で決めるが、失うものは悪魔が決める。
そう、
「僕はグーフォかラ知識を全て受ケるのニ四年かかッた。だけド、君ハもっともっト早く終わらセる」
「……はい」
「まア、今日はもウ遅いかラお休ミ」
「はい」
椅子から立ち上がり、一礼をする。
そう言ってもらえてありがたかった。正直、色々な事がありすぎてかなり疲れたので、今日はもう休みたかった。
戸に手をかけ、開ける。部屋を出て、丁寧に閉める。振り返ると、……巨体。
「──!?」
「Aちゃん、お疲れ様。その様子だと、無事教えてもらえそうなのね?」
ジーノ管理官は、まだ家に帰ってなかったようだった。どうやら外で私を待っていたらしいが、隊長はいなかった。
「オスカーちゃんなら先に帰ったわ。ほら、あなたも帰りましょ」
「はい」
管理官は、やはり私の後ろを歩く。特に会話もなく、静かに、寮に着いた。
「じゃあねAちゃん、おやすみ」
「お疲れ様でした」
私は管理官に一礼し、階段を上る。
廊下を進み、部屋の前に立ち、鍵を差し込む。ふうっと息を吐いてから戸を押した。
……今日は本当に疲れた。
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