危機 ページ41
ドラットンはもう一度部屋を見渡すと、舌打ちをして、部屋を出ていった。
「いい加減にするのだ！！ おまえのしてることは営業妨害なのだ！ 何も買わないなら早く出てくのだ！！」
てんちょーの怒りの叫び声が聞こえた。
「うるせーな。分かったよ、手間賃だ、騒がせたな」
バコッ！！ と、机に何かを乱暴に叩きつける音がした。乱暴な足音はどんどん遠ざかり、車に乗り込み走り去る音の後、静寂が訪れた。
「…………………………」
「……A、もう大丈夫なのだ」
ドラットンが完全にいなくなったのを見計らい、てんちょーが声をかけてくれた。
「はい……。庇ってくれてありがとうございます」
「てんちょーも、さすがに緊張したのだ。あの男、突然おまえを探して…… なんだったのだ」
「あの、私…… 出てった方がいいですかね？」
「何故なのだ？ もうテロリストの所に行くのだ？」
「いえ、ここにいたら、邪魔になってしまうかと」
「気にすることないのだ」
てんちょーは、しれっと言ってのけた。
「おまえがいることでキズぐすりの調達が楽で助かってるのだ。だから、てんちょーのためにできるだけ長くいてもらうのだ」
そう言って、彼はふいと顔を背け、ドラットンが叩き付けてきた金をじっくりと眺めた。なんの異常が無いことが確認されると、私に手渡してきた。
「てんちょーはお金を使わないから、おまえが持つのだ。あいつからの迷惑料なのだ」
「……ありがとうございます」
てんちょーの心遣いがありがたかった。だけど、どうしても恐怖は拭えなかった。
OCTの、よりによって
そんないくつかの札を握りしめ、目を閉じた。
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