警察署の地下室 ページ5
「決まりね♪ じゃあ、行きましょ?」
「……どこに?」
「知らないの? ──閉鎖された地下室。アナタでもウワサくらいは聞いたことあるでしょ?」
「…………」
「ホラ、行くわよ。あ、もちろんこの事は他のコには絶対内緒よ?」
管理官が急かすので、黙って歩き始めた。私の前を隊長が、後ろを管理官が歩いている。二人に挟まれているのだ。
正直、恐ろしくないと言ったら嘘になる。だが、逃げれるわけでもないので、淡々と歩みを進める。
そんな状態でしばらく歩いてると、地下に着いた。
少し錆びた仰々しい鉄の扉に、ジーノ管理官が鍵を差し込んで回す。かちり、と鍵の開く音がする。
管理官は扉をノックすると、「シツレイするわよ」と、相手の返事を待たず扉を開けた。
中にいたのは──毛むくじゃらの丸い物体と、老いた男。
毛むくじゃらの物体は、よく見たら梟の頭を持つ丸い体型の小柄な人間だった。……いや、どう見ても人間ではない。
老いた男は、服装が違えば老婆に見えるほど、優しそうな顔立ちだった。ただ、その見た目の割に、動きのひとつひとつは機敏だ。
閉鎖されてると噂のその部屋の中は、薬の苦い臭いが漂う、こぢんまりとした小綺麗な部屋だった。清潔にしてるのは、薬を作るからだろう。
老人は、こちらを確認し顔をしかめると、ひたひたと近づいてきた。
「突然何の用でスか」
優しい声だが、何故か言葉の発音が少し変だ。多少不思議に思ったが、ジーノ管理官は特に気にせず話を進める。
「何って、この子はあなたの後釜の子よ。あなたの技術を教えてあげてちょうだい」
「……この娘が?」
老人は再び眉をひそめ、私を見た。黙っているのも何なので、とりあえず自己紹介をする。
「A・カルヴィです」
「……」
老人は、変わらず怪訝な顔で私を見る。それはそうだろう、いきなり知らない小娘が訪れたのだから。
「じゃあねAちゃん、頑張ってね。チャオ〜♪」
管理官と隊長はさっさと去ってしまった。この部屋が苦手なのだろうか。
沈黙が、私と人外と老人の間を流れる。
時計の針が三周ほどしたころ、口を開いたのは人外だった。
「マア、立チ話モ何ダカラ、ソコノ椅子ニデモ座レ」
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