危機 ページ40
「女? …んの…な…だ」
ドアがしっかり閉まってるため、会話が聞こえにくい。だが、どうにか耳を澄まし、会話を聞く。もちろん、壁の裏に姿を隠し、念のため机の下に隠れながら。
「だか…、こ…な女…よ。知ら……か」
「綺麗な……のだ。でも、…んちょーは………いのだ」
だが、私は、気がついてしまった。というより、思い出した。
逆に、どうして今まで気がつかなかったのだろう。自分の馬鹿さ加減に呆れつつ、古い記憶をたどる。
あの男の名は、ドラットン・ベルクマン。今ラプラスに派遣されているOCTの、最高位の男だ。
────何故、あの人がこんなところに!!
体が、硬直した。あの男は、危険だ。テロリストを殺すことを目的としているため、人質のことは全く頭にないような奴だ。
底知れない恐怖があり、私は、
「本当にいねぇのか?」
何故か、はっきり声が聞こえた。
いつの間にか、机の上の窓が開けられており、ドラットンが身を乗り出して部屋の中を見渡していた。
──まずい!!
部屋に入られ、隅を探られたら終わりだ。血の気が引き、心臓の鼓動が早くなるのを感じたが、咄嗟に手で口を塞ぎ、呼吸が漏れないようにする。
「やめるのだ! 営業妨害なのだ!! そこはてんちょーの仕事場なのだ!!」
てんちょーが怒っている。先程も、知らないということを言っていたが、もしかしたら私を庇ってくれてるのかもしれない。だが、それでも、危ない。
「うるせーな。用が済んだら帰る、黙っとけ」
めんどくさそうに答え、ドラットンは、睨み付けるように部屋を見回す。つんとした薬の臭いが鼻につき、ついでに変なキノコも目についた。
先程まで誰かいたような感じだ。だが、あのてんちょーとやらが、自分が来てからすぐに移動してたという可能性もある。
もっと詳しく見るべきか。
窓を乗り越え、部屋に入った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドスッ、と重そうな音がした。
ドラットンが、私が隠れている机の、目の前にいる。
ひっ、と声が出そうになった。だが、口を塞いでいたので、恐らく聞こえていないはずだ。
「おい、誰かいんのか? いたら早いとこ出てこいよ」
出てこいと言われ素直に出るほど馬鹿ではない。ゆっくり、ゆっくり呼吸をして、気配を殺した。
「…………………………」
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