カルロ・ロンバルド ページ35
「ただひとつの事に…… 打ち込みたい。種類は問わない！ おれが、夢中になれるものを──」
「ワカッタ」
「……は？」
悪魔・グーフォは、あっさり頷いた。
「夢中ニナレルモノダナ。ナラ、私デモ与エラレル」
「ほ、本当に……」
「ダガ────代償ハ、高ク付クゾ」
悪魔はにやりと笑うと、手を伸ばし、カルロの頭に触れた。
「ソラ、ヤルヨ。悪魔薬学ノ知識ダ」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「そ………た……すね。あ……と………は」
「ソウダ」
目が覚めたばかりということもあり、弟子娘の声はくぐもっているが、グーフォの声だけは相変わらずはっきりと聞こえる。
「お……、もう、……で……う……すね」
彼女の声は、悲しそうなものになった。本当に優しい子だ。こんな、欲のために罪を犯した愚かな男を、哀れんでくれるなんて。
「あ、お師匠。起きたんですね」
彼女はこちらに寄ると、ソファの横に膝立ちでしゃがみこんだ。そっと、僕の左手を、両手でとった。
「……A。僕は、モう、ダメだ。キミに、何モ、しテやれナい。ごめンね、やっパり、中途半端デ…… ダメだナ」
「お師匠…… 私は、お師匠からたくさんの事を教えていただきました。どうか、ご自分に価値がないなんて思わないでください」
言葉の最後の方は、震えており、泣くのを堪えているようだった。
「今まで、本当に、ありがとうございました。悪魔薬学を学べて、良かった、です」
丁寧な礼の中に、嗚咽が混じる。
ああ、本当ニ、君は良い子だネ。
震え、痺れた右手を伸ばし、彼女の頭を撫でた。
「ありがとうは、こちらの言葉だよ。優しい子」
「……」
「……グーフォ、頼みガある。どウか、Aに、最後ノ悪魔薬学を────
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一瞬、カルロの発音が、普通のものになった。死に際だから、どことなく、代償が薄れているのだろうか。
「……グーフォ、頼みガある。どウか、Aに、最後ノ悪魔薬学を────彼女が望ムなラ、教えテやッてくレ」
カルロは、しわがれた震え声で、自分に言ってきた。
ふざけるな。悪魔は、代償がないとお前ら人間になにもしてやる義理なんて無い。全く、意味がないのだ。
「……フン、代償モナシニ何ヲ言ッテイル」
「
「……」
そんなことする価値もない。
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