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カルロ・ロンバルド ページ34

男は焦っていた。

回りの人々や友人は、皆自分の好きなことややりたいことを生かせる職に就いていた。医者、警官、あるいは伝統的な工芸品の職人────

だが、男──カルロ・ロンバルドは、昔から、人とは違うことをやりたいと思っていた。結果、この歳──25歳──になっても、とうとう夢中になれるものを見つけられなかった。

もし、興味を持ったものをとことん追求できていれば(・・・・・・)、それが今に結びついたのかもしれない。だが、もう遅い。

しびれを切らした両親は、彼を家から追い出したからだ。もはやカルロには、行くあても、帰る場所も無かった。

何もない、からっぽの男。彼は、昔からそうだった。ひとつの事を追求するのが苦手で、つまずくとすぐに投げ出してしまう。

そんな自分が嫌だった。

でも、変えられなかった。彼はいつも苦しんでおり、いっそ、人生に別れを告げることも考えた。

しかし、高層ビルの屋上に立ったとき、彼はふと思った。

────どうせ死ぬなら、何かしてから死んだらどうだろうか。例えば、わずかな可能性にかけるだけでも。

彼は身を翻し、その場から消えた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

人の気配のない廃ビルで、カルロは昼間集めたものを取り出した。

まずは、血のように赤いチョークで、床に魔方陣を描いていく。細かな模様を間違えないよう、慎重に、丁寧に行った。

魔方陣を描き終えると、懐から鼠の血を取り出した。それを陣の真ん中にたらし、さらに鼠の死骸も乗せた。

それはカルロが知っていた、悪魔召喚の方法だった。

死骸が地面に着いた途端、ぶわっと、血の臭いがする煙が立ちこめた。先程の、鼠の血と同じ臭いがする。

「────私ヲ呼ンダノハ貴様カ」

目の前に現れたのは、毛むくじゃらの物体。よく見たら梟の頭を持つ丸い体型の小柄な人間だった。……いや、どう見ても人間ではない。

「お、お前が悪魔か」

「オマエガ呼ンダンダロウガ…… イカニモ、私ガ悪魔・グーフォダ。私ヲ呼ンダトイウコトハ、願イハ決マッテイルナ」

本物の悪魔を目の前にしてしばし唖然としそうだったが、その言葉に一気に引き戻された。

「……は? どういうことだ? 悪魔は、代償と引き換えに、願いを何でも叶えるのではないのか!?」

「マア、ソウダガ…… ソモソモ、オマエノ望ミハ何ナンダ」

そうだ。まだ、何も言っていなかった。

「お、おれの、望みは……

……夢中に、なれるもの、だ」

「ホウ」

カルロ・ロンバルド→←地下室の終焉



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作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年9月26日 22時

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