覚醒 ページ30
「あの、オスカーさん、これを。魔人によく効くものです。あなたの傷はまだ完治してませんから…… 今から塗るので、脱いでもらっていいですか？」
「……あ、ああ？」
先程の軟膏を手に取り、蓋を開けた。つんと、青臭い臭いが鼻をつく。隊長はどこか戸惑いながらも、入院着を脱いでくれた。包帯を外し、薬を塗り込んでいく。
以前見たように、鍛え抜かれて引き締まった肉体ではあるけれど、多少衰えている気がする。
それに──腹部に怪我の痕が、生々しく残っているのが痛々しい。そんなことを思いながら、新しいガーゼを当て、清潔な包帯を巻き直した。
「……すまない」
「いいんですよ。あと、これを」
私はベッドの裏から、紙袋を取り出し、隊長に手渡した。──その中には、ライダースジャケットと黒革のパンツが入っている。あるもの、だ。
「
「……ああ。カルヴィ、お前は…… 分かっていたのか」
「はい。何となく、そうかなって」
隊長にとって、弟はとても大事な存在だ。目を覚ましたら、たとえテロリストに加担していようとも、絶対に彼の元に行くに違いない──そう思っていたのだ。
出来ることなら、私も、共に行きたい。でも、悪魔薬学を学びきれていないのについて行ったところで、足手まといになるのは目に見えている。
今はまだ、隊長の力になれない。その事実が、どうしようもなく辛かった。顔を伏せ、黙って紙袋を差し出した。
隊長はそれを受け取ると、私に背を向け、淡々と着替え始めた。私も慌てて後ろを向き、両手を、ぎゅっと強く握りしめる。
少しの間、隊長が着替える音だけが聞こえた。
「……カルヴィ。もう大丈夫だ」
「そうですか」
私が見繕った黒い服一式は、とてもよく似合っていた。
「良かった、似合ってます。サイズも大丈夫そうですね」
「そうだな」
心なしか、隊長の頬が赤く染まっている…… 気がする。何だかこちらまでいたたまれなくなり、再びベッドの裏を探った。
そして────ベルトと、一対のサーベルを取り出す。
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