覚醒 ページ29
洞窟の事件から一週間が経った。
この一週間が、私は、本当に忙しかった。隊長のために
お陰で、病院に全く行けなくなってしまった。そもそも、ただの部下なのに病院に何度も見舞いに行く方がおかしいかもしれない。
でも、私はもう、
初めは怖い人だと思っていた。だけど、今は違う。怖いくらいまっすぐで、意志を貫き通すあの人を、心の底から慕わしく思っている。
「(なんか、言ってて恥ずかしくなってきたな)」
あるものの調達も終わったので、久しぶりに病院に向かう事にした。
ラプラス警察は、心なしか再び慌ただしくなっているような気がする。もう夕方なのに、ご苦労なことだ。
────そういえば、最近ジーノ管理官を見なくなった気がする。忙しいのかな？
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あるものと悪魔薬を持ち、私は病室に向かう。隊長は、相変わらずすやすやと眠っていた。
これは、持っているのがバレたら、きっと大変なことになる。病室の鍵をかけてから、隊長の眠るベッドの裏に、そっと隠した。
椅子に腰掛け、悪魔軟膏の入っている瓶を握りしめ、俯く。
いつになったら、隊長は目を覚ますのだろう。早くしないと、間に合わなくなってしまうかもしれないのに。
「……隊長……」
私は、窓の遠く向こうに光っている、カジノ・ミスティの喧騒を見つめた。明るく、派手なミスティでは、今日も笑顔と涙と絶望が溢れているのだろう。
「…………………………」
「…………………………？」
今、視界の端で、何かが動いた。
人の手だ。私の手は、軟膏を握りしめているから、私ではない事は明らかだ。
なら、動いたのは────
「…………カルヴィ、か」
「……オスカーさん！？」
隊長の手だ。隊長が、目を、開けている！
事実を認識した途端、涙が溢れてきた。軟膏を置き、その手を握りしめた。冷たい手が、だんだんと温もりを取り戻していく。
「良かった…… 良かったぁ…… オスカーさん」
また涙が溢れそうになったけど、はっと気がついた。
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