無口な対話 ページ24
隊長はすぐに立ち上がり、再び裏口に向かっていった。
ああ、またすぐに行ってしまう。危ないのに。
魔人 ノエル・チェルクェッティと大悪魔カロンは、隊長がこんなに傷つくほど、強い相手なのだろうか。
そう思うと、なぜだろう。
隊長の背中がぼんやりと霞んで見えた。
「────隊長!!」
気づけば、叫んでいた。
隊長は、一度立ち止まり、少し悩んでから、ゆっくりとこちらを振り向く。
改めて顔をまじまじと見ると、その表情はいつもより険しく、目の下には濃いクマがあった。
呼び止めてから、少し戸惑った。どうして呼び止めてしまったのだろう。
いや、理由ははっきりしている。何故か、今……
────隊長が、これから死んでしまうような気がしたのだ。
「……あ、えっと、……」
言葉がつまった様子の私に、隊長は顔をしかめた。
用があるなら早くしろ。無言でそう言われているように思った。
「……どうか、お気を付けて」
頑張って絞り出した言葉は、典型的なものだった。それを聞くと、隊長は身を翻し、すぐに去っていった。
──ああ、怖い。怖くて、仕方がない。
隊長が、消えてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。
でも、隊長の信念を、私なんかが邪魔してはいけない。
──私にできることは、限られているのだから。
自分の無力さに腹が立つ。だけど、どうしようもない。今度はため息を着き、治療に使った道具を片付け始める。
──隊長は強いから、きっと大丈夫。明日には、魔人と悪魔を倒して戻ってくるはずだ。
片付けを終え、ふと簪を外し、蝶の飾りの部分を夕陽に透かして見てみた。まとめていた髪が、はらはらとほどける。
青い羽が、橙色の光を浴びて、きらきらと輝いていた。
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