無口な対話 ページ23
下は制服だが、上は当然着ていない。その方が助かるけれど、直視しづらかった。顔が赤くなりそうだが、どうにかこらえる。
「始めますね。まず体の一番大きな傷を縫います。渡し、麻酔はできないので多分痛いですから、一応このタオル噛んでてください」
新品のタオルを隊長に渡し、自分の手を消毒し、針を取り出した。消毒はもう充分だろう。
隊長がタオルを噛んだのを確認してから、ゆっくりと、治療を始めた。丁寧に薬を塗りつつ、傷を縫い合わせていく。
「……そういえば、隊長の魔人としての能力って何なのですか？」
「………………………………」
「あ、すみません。タオル噛んでたら喋れませんよね」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「終わりました」
糸を結び、余分なところを切ってから、ふぅっと息を着いた。始めはゆっくりとやったが、途中からはてきぱきと行った。暴れられなかったため、集中して施術できて良かった。
「すまない」
隊長はタオルを外し、ぼそりと呟いた。
「いいんですよ。──私の、仕事でもありますから」
脱脂綿に消毒液を垂らし、再び傷回りを軽く消毒する。そこにガーゼを当て、包帯を取り出す。丁寧に、しかしほどけないようしっかり巻きつけ、固定する。
「これでここの傷回りは治療が終わりです。ですが、傷が深いのでしばらくは少し血がにじむかもしれません」
「そうか」
「……次は、他の箇所を治療しますね」
腕や顔にも擦り傷や切り傷があるのだ。放っておくわけにはいかないので、消毒をして傷薬を塗り、ガーゼや包帯で固定する。そんなにひどくない箇所は、薬を薄く塗るだけにする。
「あの、さっきの事なんですけど」
「身体の硬質化だ。代償は、この力で悪魔や魔人に傷をつけると、オレ自身にも同じ傷が刻まれる」
「……そうなんですか。教えてくださりありがとうございます」
「……分かっているだろうが」
「誰にも言いませんよ。大丈夫です」
隊長は、それきり何も言わずに黙りこんだ。私も、黙々と作業をする。
二人きりになるのなんていつぶりだろうか。微かに、私の胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。
顔に傷薬を塗りつけ、全ての治療が終わった。
「これで大丈夫です。あとは、あまり激しく動かないでください」
「そうか。手間かけさせたな」
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