検索窓
今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:13,866 hit

ラプラスの警察署 ページ3

「……さすがに、肩が痛いな」

書類をデータ化するのには思ったより時間がかかった。終わらせてから時計を確認すると、もう定時になっている。

そろそろ寮に戻らなければ。

書類を片付け、そそくさと荷物をまとめ、寮の方向に向かって歩き出した。

すたすたと足を進めていると、何だか耳に違和感を感じた。──誰かが、呻く声がする。

「……ゴ、…………は、……ず、……レの、……とに」

きょろきょろと回りを見ると、わずかに扉が開いている部屋があった。人が滅多に来ない倉庫だ。

隙間からは、剃り込みが入った金髪が見える。あれは…… オスカー隊長だ。何故こんなところにいるのだろう。

「……フー、ゴ、………… 何故、……」

私は、苦しそうにしているから、声をかけなければと思っただけだった。

「オスカー隊長、大じょ……」

私が声を出した直後、彼は勢いよくこちらを振り返った。驚いたような表情で。

だが──彼の瞳は、翠玉(エメラルド)色でなくなっていた。

彼の瞳は、柘榴石(ガーネット)のような、鮮やかな赤になっていた。

白目は黒色になり、顔には魔方陣のような模様も浮かんでいる。さらに、よく見ると、彼の回りに黒い靄のようなものが浮かんでいた。

私はそれが何だか知っている。

以前、知ったことがあるから。

──魔人の、堕天現象。

悪魔と契約した人間に起こる、悪魔との願いを、日々、よほど愚直に意識してないと起こらない力。

意志の強さがそのまま力になるそれは、己の命を削る諸刃の剣。だが、今はそれどころではない。

隊長は、本当は魔人だった?

悪魔との契約は、この国では犯罪だ。しかも、法を司るラプラス警察の機動隊隊長が、魔人。

この事がとんでもないことだというのは、一瞬で理解した。これはまずい。背中を、嫌な汗が伝って落ちた。

「(私…… もしかして消される?)」

オスカー隊長は、堕天を引っ込めると、廊下に突っ立っている私にずんずんと近づいてくる。──本当にまずい!!

私は弾けるように駆け出す。だが、ヒールを履いて走る私に、機動隊隊長が追い付けないはずがなかった。

あっという間に隊長に捕まり、手を掴まれた。持っていた荷物が床に落ちる。抵抗しようとするが男の力には敵わない。

「……離し……!」

叫ぼうとする私の口を、彼は手で塞ぐ。私の手を掴み、口を塞いだまま、先程の倉庫に連れてかれる。

──あー、これは本当に、終わったかな。

ラプラスの警察署→←ラプラスの警察署



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
20人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年9月26日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。