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爆弾魔 ページ19

磨り潰したカナレグサをメインに、他にも色々混ぜた薬だ。これは呼吸器によく効く。

まず水差で爆弾魔(ボマー)に水を飲ませてから、粉薬を少し口に入れ、水を含ませ飲ませるの繰り返しだ。少し量があるので、一度だと飲みきれないだろう。

全て飲ませると、彼の呼吸が多少楽になったようだ。心なしか、隊長が少し安心しているようにも見える。

「よシ、これデ終わリかナ。頑張ったネ、A。初めテにしてハ上々だ」

「はい」

薬などの荷物を片付け、独房を出る。しっかりと鍵を閉め、私たちはラプラス第二刑務所を後にした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「隊長」

警察署に戻り、夕方。私は爆弾魔(ボマー)に関する報告書を手に、隊長の元に向かった。報告書には、(ボマー)の怪我の状態と、施した治療についてまとめてある。

「……ああ。すまない」

隊長は報告書を奪うように取ると、じっくりと見始めた。私は何も言わず、隊長のそばに立ったままだ。ただでさえ険のある目付きなのに、より険しくなっている。

「……何故、フーゴは、あんな……」

「………」

「クソッ!! クソッ!!! オレが…… オレだけがあいつを救えるはずだったのに……!!」

隊長は、報告書を思い切り地面に叩きつけた。

バシッ、と鋭い音と共に、報告書に皺ができる。あまりの剣幕に、呆然としてしまった。

隊長は、報告書をしばらく見ていたが、そのうちそれを脇に抱え、自室に去ってしまった。乱暴にドアを閉める音が、廊下に響く。

すっかり変わってしまった隊長に、また、しばらく呆然としていた。しばらくして口から漏れたのは、かすれた声だった。

「……どうして?」

ふらふらとしながらも足を動かし、自室に戻った。ベッドに思い切り腰掛けると、少しの間何も考えられなくなった。

────温く、頬を伝うものがあることに気がつくまでは。

涙なんて、とうに捨てたと思ってた。悪魔薬学を教わる前の私は、ぼんやり生きていたいだけだったから。ようやく、楽しいと思うことができて、幸せを感じるようになったのに。

────また、あっけなく崩れるのだろうか(・・ ・・・・・・・・・・・・・)

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作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年9月26日 22時

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