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爆弾魔 ページ17

「(な、何だ。気づいてもらえなかったな……)」

少ししょんぼりしてたが、すぐにはっとした。

つい昨日、爆弾魔(ボマー)が逮捕されたのだ。彼は隊長の弟で、あれだけ強く弟を想う隊長は、その事で頭がいっぱいのはず。それなのに、私は自分の事で浮かれていた。

「(……しまった)」

何か声をかけるべきだっただろう。自分の察しの悪さに、さっきとは別の意味でしばしへこんだ。

もう大人しく、地下室に向かうことにした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「グッ、ゴホッ…… あア、A、いらッしゃい。今日はナんダか上が騒ガしいネ」

「……? おはようございます、お師匠。それが…… どうやら昨日の夕方ごろ、爆弾魔(ボマー)が逮捕されたらしいんです」

「あア、そウか。 ……ヒドいケガなら診てあゲた方がいいカもな」

「どうでしょうか」

ニュースや噂によると、どうやら彼は重い鉄骨に押し潰されていたらしい。常人なら死んでいるような大怪我で、血の池に沈む彼は、隊長の姿を見るや否や笑ったとか。

「……あアそうダ。折角だから、(ボマー)の治療、キミがやるカい?」

「……へ!?」

お知らせのあまりにも唐突な申し出に、間抜けな声が漏れた。だが、お師匠は平然と答える。

「ラプラス警察署の機動隊隊長の弟とハいえネ、彼ハ犯罪者だ。君が練習をスるにハ、僕は合理的だト思うけド?」

「そうかもしれませんけど……」

もし隊長がこの事を知ったら、どう思うだろうか。私の頭に浮かんだのはそれだった。

「まア、僕はいくヨ。どチらニせよ、来てクれっテ言わレたからネ」

「……わ、私も、行きます」

「無理してナいかイ?」

「はい」

だけど、気づけば冷静になっていた。いろいろな事が起こりすぎてて、最早慣れたのかもしれない。

──ノックの音が聞こえた。隊長の叩き方ではない。

扉を開けたのは、ジーノ管理官だった。横には、オスカー隊長もいた。

「おはよう。あら、Aちゃんもいるのね。丁度良いわ、そろそろ行きましょ」

「あア」

ゆっくりと立ち上がり、杖をつきながらよたよたと歩くお師匠。痛々しい姿に、少し胸が痛んだ。私たちは、お師匠を支えつつ、ゆっくりと、爆弾魔(ボマー)の元に向かっていた。

パトカーに乗るまでの間、誰にも会わなかったのは、人払いをしていただろうか。運転席に隊長、助手席に管理官、後ろに私とお師匠が乗り込んだ。

爆弾魔→←爆弾魔



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作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年9月26日 22時

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