爆弾魔 ページ16
翌日のラプラス警察署は、なんだか慌ただしかった。お陰で早く目が覚めたけれど。
朝食を食べ、服を着替え、長い髪を地味で大きめの
白い縦長の箱を取り出し、蓋をそっと開ける。中には、鮮やかなモルフォ蝶のモチーフの付いた簪。
昨日、これを使った髪のまとめ方をわざわざ調べたのだ。早めに起きれたから、試す時間はある。
髪をねじり、その根本に簪を挿す。横に簪の軸を出し、ねじった髪を巻き付け、くるりと回して再び根本に挿して固定する。
────初めてやってみたけど、案外上手くいったな。
二つの鏡で頭の後ろを確認すると、鮮やかなモチーフが見えた。うん、悪くない。
小さく鼻歌を歌いながら荷物をまとめた私は、どこかご機嫌なまま部屋を出た。
それにしても朝から何事かと思ったが、元同僚らの会話の端々に、
その他には、「昨日の夕方」「烏のような頭部の大悪魔と手足を失った魔人の少女」といった言葉も聞こえた。
────もしかして、あの
それに、最近噂になっていた、ピアノの名家の令嬢ノエル・チェルクェッティの行方不明。
細々とした情報が繋がり、点が、線になり、形になる。
────ノエル・チェルクェッティは、理由は不明ながら大悪魔と契約をして魔人になり、ボマーを倒した？
いや、理由はあるはずだ。今年のラプラス市の記念式典の式典奏者を決めるピアノコンクールの優勝者は、確か
────ピアノの名家の令嬢なのに優勝を逃したから、悪魔と契約した？
だとしたら納得できる。気の毒に、少女にとってコンクールはものすごい
名家の令嬢なのに優勝を逃してしまったなら、悪魔と契約してまで式典奏者になりたいと思うかもしれない。
まだ私の妄想だから確信はないけれど、可能性は高いはずだ。
そんなことをぶつぶつと考えながら歩いていると、まともに前を見てなくて、誰かにぶつかってしまった。
「す、すみません！ ……あ」
それは、オスカー隊長だった。胸がどくんと鳴る。
昨日もらった簪を挿したけれど、気づいてもらえるだろうか。お礼と共に自然に伝えてみようか。
「……」
が、隊長は何も言わず、身を翻し去ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
