検索窓
今日:6 hit、昨日:25 hit、合計:13,892 hit

翠玉 ページ15

一週間ほどしてから、お互いぽつりぽつりと話すようになったが、二人で空を眺めていることがほとんどだった。

そうしているときだけは不思議と、張りつめている心が落ち着いていた。────いや、違う。その言い方は、少し語弊がある。

Aといるときは、心が落ち着く。

彼女が時折見せる、優しく柔らかな笑顔に、心惹かれている。

まだ弟ひとり救えていないのに、部下の娘にそんなふしだらな感情を持つ自分に呆れ、怒りを覚えた。

────(フーゴ)を救うことがオレの全てなのに、別の事を想ってどうするのだ。

なのに昨日、警察署一の洒落者と言われる他の部下に頼み、美しい(プレゼント)を選んで、買ってしまった。

昼間、それをAに渡した。彼女の誕生日は、以前資料で見たことがあったので知っていた。

「とっても素敵です。本当にありがとうございます、隊長」

礼を述べながら、頬を緩め、笑うA。

眩しく感じるほど可愛らしい彼女を直視できず、顔をそらしながら色々話をした。

本当は、別に話をする必要は無かったのに。何故話をしたのだろうか。

オレはAに、オレの事を知って欲しかったのだろうか。

また、顔が赤くなる。いや、顔どころか、耳まで熱を持ち始めた。今、自分はどんな顔をしているのだろうか。

きっと、どこか情けない顔をして────

「隊長!!」

突然、扉を開く音と共に、部下の声がした。驚いて椅子から落ちそうになるのを、どうにか堪え、厳しい顔に戻す。

「ノックもせずにどうした?」

「そ、それが……!!」

部下は、息を切らしながら、先程飛び込んできた通報と情報を伝えた。

それを聞くや否や、オスカーは顔色を変えて部屋を飛び出し、パトカーに乗り込んだ。

────彼が向かった先は、市民の間でドレッセル製鉄所と呼ばれている廃製鉄所だった。

爆弾魔→←翠玉



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
20人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年9月26日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。