翠玉 ページ15
一週間ほどしてから、お互いぽつりぽつりと話すようになったが、二人で空を眺めていることがほとんどだった。
そうしているときだけは不思議と、張りつめている心が落ち着いていた。────いや、違う。その言い方は、少し語弊がある。
Aといるときは、心が落ち着く。
彼女が時折見せる、優しく柔らかな笑顔に、心惹かれている。
まだ弟ひとり救えていないのに、部下の娘にそんなふしだらな感情を持つ自分に呆れ、怒りを覚えた。
────
なのに昨日、警察署一の洒落者と言われる他の部下に頼み、美しい
昼間、それをAに渡した。彼女の誕生日は、以前資料で見たことがあったので知っていた。
「とっても素敵です。本当にありがとうございます、隊長」
礼を述べながら、頬を緩め、笑うA。
眩しく感じるほど可愛らしい彼女を直視できず、顔をそらしながら色々話をした。
本当は、別に話をする必要は無かったのに。何故話をしたのだろうか。
オレはAに、オレの事を知って欲しかったのだろうか。
また、顔が赤くなる。いや、顔どころか、耳まで熱を持ち始めた。今、自分はどんな顔をしているのだろうか。
きっと、どこか情けない顔をして────
「隊長!!」
突然、扉を開く音と共に、部下の声がした。驚いて椅子から落ちそうになるのを、どうにか堪え、厳しい顔に戻す。
「ノックもせずにどうした?」
「そ、それが……!!」
部下は、息を切らしながら、先程飛び込んできた通報と情報を伝えた。
それを聞くや否や、オスカーは顔色を変えて部屋を飛び出し、パトカーに乗り込んだ。
────彼が向かった先は、市民の間でドレッセル製鉄所と呼ばれている廃製鉄所だった。
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