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傍らの蝶 ページ13

「その事故で両親は死に、弟は行方不明になった。親戚にも見捨てられたオレは、ジーノ管理官に引き取られ、警察官になった。そして、ある事件に携わることになった」

「それって…… 二年前の?」

「さすがだ、よく知っているな。そうだ、二年前の、 “ 冬の音楽祭 ” 事件だ。オレはあの時、爆弾魔(ボマー)を追いかけていた」

「…………」

隊長は淡々と語る。だけど、確か爆弾魔(ボマー)の正体は……

「それが…… 弟のフーゴだった。あいつが悪魔との契約で手に入れた、圧倒的な魔人の力に、オレはなすすべが無かった。だから、オレ自身も悪魔と契約をした。

すべてはあいつ(フーゴ)を連れ戻すため。それが、オレが常日頃信じる “ 正義 ” だ。オレが(・・・)あいつを捕まえ、オレが(・・・)あいつを更正させ、表の世界に連れ戻す。そして、本当の姿を取り戻す」

フーゴ・ドレッセル。爆弾魔(ボマー)の本名だ。隊長と同じ名字だとは思っていたが、本当に兄弟だったとは。

「……そう、だったんですね」

話を全て聞き終えたとき、隊長の険のある顔つきが、哀しく見えた。

隊長は立ち上がり、すたすたと歩き始める。そろそろ休憩時間も終わりだろう。私も、手提げと箱を手に後ろに続いた。

扉の前で隊長と別れ、午後もお師匠の指導の下、調合の練習をする。

……これがいつも通りの日常なのに、なんだか胸騒ぎがした。

「ヨし、いい感ジだネ」

「はい」

「……それハそウと、A。キミ、簡易的な外科手術も学ぶ気はナいかイ?」

「簡易的……? って、お師匠。それって犯罪では? 医師免許も無いのにそんなことしたら……」

「いヤ、そモそも悪魔とノ契約は犯罪ダよ。それに、魔人とカの治療にはよク使うサ。現に、キミとよクいる彼は魔人ジゃないカ」

「……知ってるんですか。隊長が魔人だって」

「雰囲気で分カるサ」

お師匠は飄々と言ってのけた。魔人は魔人同士、通じるものでもあるのだろうか。

それに、よく考えたら、ここは警察署だ。犯罪者である魔人を保持している警察署に対して、今さら犯罪どうのなんて言うのも変な話かもしれない。

「じゃあ…… お願いします」

「簡単な道デは無イよ」

「分かってます。でも、絶対身につけてみせます」

「……そうカい。ゴホッ」

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作者名:紅ゆずりは | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年9月26日 22時

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