ラプラスの警察署 ページ2
「カルヴィ」
上官に呼ばれる声がしたので、後ろを振りかえる。
そこに立っているのは、二人。
丁寧にセットされたピンクの髪に、顔にはしっかりと化粧をした、けばけばしい扇子を持った大男。
もう一人は、剃り込みの入った金髪で、耳や顔にピアスだらけだが、翠玉のような色の瞳をしている若い男。
このラプラス警察の管理官であるジーノ・ロレンツィと、その部下の機動隊隊長、オスカー・ドレッセルだ。
この二人は、義理の親子だの何だの…… という親密な関係であるらしく、共に行動していることが多い。
「管理官に隊長、私に何かご用でしょうか?」
それなりに位はあるものの、上官である二人に下手な口を利くわけにはいかない私は、表情を少し緩め、丁寧な口調を心がけ答える。
そんな私の様子に、ジーノ管理官はにっこりと笑う。そして──手に持っていた大量の書類を私に手渡した。
「ハイ、この書類。よろしく♪」
「……これは? データ化すればよろしいのですか?」
「そうよ〜。アナタが優秀なのはアタシ達にも伝わってるわ。頑張ってね♪」
「はい」
「ん〜。じゃあね♪ A
「失礼します」
ジーノ管理官は巨体を揺らし、颯爽と去っていく。つけている香水の香りが、鼻についた。香水自体はいいものなのに、相変わらずつけすぎだ。
──それにしても何故、私のフルネームを知ってるのだろう。
手渡された書類をデータ化するために、パソコンのある部屋に向かう。歩きながら、ぼんやりと考える。
相変わらずといえば、横のオスカー隊長は一言も喋らなかった。
それに関しては特に何とも思ってないが、いつも不機嫌そうな顔で、険のある目つきをしているので、正直少し怖い印象がある。
だが、あの若さで、機動隊隊長。彼には何かあるんじゃないだろうか、と好奇心がわくこともあったが、それを突き詰めるほど命知らずではない。
以前耳にした噂にしてもそうだ。
別館の地下は、誰も入れない謎の部屋があるという話。どうせろくでもない事をしているのだろう、と私は思う。それか、ただ本当に閉鎖してあるだけ。
私は、世の中は知らないふりをしていた方が立ち回りやすいと知っている。だから、仕事に必要なこと以外の多くは知らないふりをする。
──最も、それが通用しなくなることもあるけれど。
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