quartetto. 6

温もり ページ23

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彼女のせいでテンションもガタ落ちになってしまい

臣くんが他のテーブル席に行っている間に
素早くワインを飲み干して
帰る支度をすると

慌てて臣くんが戻ってきた














「帰んの？」


『うん、お会計お願いします』


「今日もうちょっとで店閉めるんだよね
一緒に帰ろうよ、待ってて？」


『…今日は帰る
ごめん』













臣くんは待っててと言うけれど
待っていたらもう1軒と言われそうな時間だ




今日はもう楽しく話す気にもなれないし
それに待っていたところで
私の家にはすぐ着いてしまうのだから

一緒に帰る必要もない

同じ家に帰るわけでもあるまいし













不機嫌な私を心配してくれるのは有り難いけど
それに対してお礼の作り笑顔さえ用意できない私を
臣くんは心配そうに見ている






私を外まで送ろうとした臣くんの動きは
他のお客さんからの
「すいませーん」の一声で止められてしまった














『大丈夫だよ、ありがと
ほら、行って？』












なんとか必死にひきつる顔で笑顔を作ると
臣くんは「連絡する」とだけ言って
お客さんの方へ歩いて行った














1人で階段を登っていると
下から慌てたような声が聞こえる













「Aちゃん」














振り向くと
少し小走りで階段を登ってくるアキラさんがいて

そういえば
アキラさんに挨拶をしてくるのを忘れた、と
今頃気付いた













『あ、アキラさん
すいません声かけずに
ごちそうさまでした』














私のお礼の一言に笑顔で首を横に振った後
そのまま近付いてきたかと思えば
突然頭を撫でられて





またアキラさんの香りに
息が止まりそうになった

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