quartetto. 6

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行って欲しくないに決まってる


私だって会いたいのを我慢してるのに








それに付き合ってもいないこの子が会いに行ったって
隆二はきっと困るだけなのに









頭の中で答えは決まりきっていても
それをそのまま伝えてしまうと
やっぱり付き合ってますと宣言するのと同じなので
ここでも曖昧にしか返事が出来ないのがもどかしい












『んー…隆二忙しいんじゃない？』


「そうですかね？
1日くらいならなんとかなりそう！」


『そう…かもね』


「ですよね？！
やっぱり思い切って行っちゃおうかなー」


「あ、あっちでお友達呼んでるよ？」


「あっ突然すいませんでした！
じゃあまた」















自分の聞きたい事を聞けて、
言いたい事を言えてスッキリしたのか
彼女はまた可愛い笑顔でカウンターを後にした












「ごめん
まさかAに話しかけてくるとは思わなくて」











可愛らしく眉を下げて謝ってくる臣くんに
とびきりの作り笑顔を添えて首を横に振ってから
ワイングラスを差し出して
「もう一杯」とお願いした












新しい白ワインを飲みながら
ぼーっと考える











正直、悔しいけれど











彼女の事を羨ましいと思う













好きという気持ちに正直で
好きだから会いたい、という気持ちには
なんの迷いもない











私だって本当は
たった1日だけでも会えるなら
それ以外の日々がどんなに寂しくても
頑張れる気がする



たった1日だけでもいいから
隆二に会いたい



あの子の様に
自分の気持ちに正直に行動できたら
どんなに楽か




でも直己さんが言った様に
私と離れる寂しさを隆二がバネにするのなら

待っている私が
会いたいなんて言っちゃいけない











「Aはホントに会いに行かないの？」


『…行かない』


「…出来た彼女だねぇ」













臣くんは冗談混じりに褒めてくれたけれど
正直嬉しくもなんともない





私の性格なのか
彼女よりも私が年齢を重ねて大人だからなのか


初めて
恋愛ってこんなに難しいものだったかと
ため息が漏れた











隆二との恋愛には
駆け引きや見栄なんて必要ない
今まで通りの私達でさえいれば
ささやかでも
幸せな日々しか来ないと思っていたのに












胸の中がズシンと重くなった

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