quartetto. 5

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なんと返せば良いのか分からず
臣くんをチラリと見ると


「好きにすれば」
とでも言うように眉を釣り上げた









さっきまであれだけ
「今は俺のだ」
と言っていたのに
肝心なところで放り投げられて
ますます困ってしまう











『…はい』













ほぼ毎日アキラさんはお店に立つのに
『仕事が忙しくて』
なんて簡単な言い訳も通用しない


かと言って
『隆二が嫌がるから行きません』
とストレートにも言いづらい







それに
あれだけ自分で避けていたにも関わらず
今この瞬間は
素直に行ってみたいと思った











色々考えて
やっと口から出た答えが
『はい』

それだけだった














それでもアキラさんは
どこか安心した様に

「待ってる」

と笑ってくれた


















「でも俺のいる日な」















ここに来てやっと臣くんが
助け舟を出してくれる














「なんでだよ、
別にいつでもいいだろ」


「俺は隆二からAの事頼むなって言われてんの
それって兄貴からAを守る為だかんね？」


「どんだけ信頼されてねーんだよ
俺、一応社長だよ？」













アキラさんはおどけながら返すけど
臣くんの表情はクールなまま

















「社長だったら
部下の彼女に手出すなよ」


「おー、こわっ」
















アキラさんが
子供の様に小さく身を縮めて
わざと怯えた様な素振りをするのが
可愛らしくて
クスリと笑ってしまったけれど




それでも臣くんはどこかイラついたまま








兄弟喧嘩に挟まれた状態になって
それが妙に怖くて
じわりと冷や汗が出てきた















「ケンカしないのー
さ、そろそろ行きますか」
















素晴らしいタイミングで
直己さんが声をかけてくれたお陰で
皆席を立ち
なんとかその冷ややかな空気からは解放された





直己さんは
この2人のやりとりに慣れているのか
何事もないかのようにケロっとしている

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