quartetto. 5

あと少し ページ26

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それから隆二がイタリアに発つまでは
何かが吹っ切れたように
ほぼ毎日カルテットに行った


以前のようにカウンターに座って
臣くんが選んでくれたお酒を飲みながら
隆二が私の為にメニューにはないものも
作ってくれる












「最近良く来るし、良く食うな」


『…食べ溜め？』


「半年分食ってんの？」













臣くんは相変わらずキリッとした笑顔で
カウンターの中から
私を愛おしそうに見てくれている










「Aちゃんいない間寂しかったよー
もうさ、カウンターがむさ苦しいの
分かる？
俺と、アキラさんと、臣がさ、
得に話もないけど、だらーんとしてるわけ
あー、良かったAちゃん来てくれて」


「私も直人さんに会いたかったですよー」


「わースゲー棒読み」












直人さんは私がいてもいなくても関係なく
足繁く通っていたくせに
私がいなくて寂しかったと
お世辞でも嬉しい事を言ってくれる










久しぶりに
カルテットでこの和やかな空気に包まれて
改めて私にはこの場所が必要なんだと
気付かされた





直人さんが
明日仕事が忙しいからと
いつもよりはお酒を控えめにして帰った後



臣くんはじーっと私を見つめて何も言わない

私を観察しているような
でもどこか
心なしか表情が不機嫌そうに見える





『…どしたの？』


「隆二いなくなったらまた来なくなる？」


『…んー…』


「俺と会うのも嫌なの？」


『臣くんはそんなんじゃないよ』




少し身を乗り出しながら
慌てて否定すると
口角を片方だけあげて
ニヤリと笑ってくれた











「じゃあさ、
兄貴が休みの日は連絡するから
それなら来てくれる？」


『あ、それいいね』


「よし、じゃあ決まり」

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