quartetto.

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アキラさんと向かったお店は本当にカルテットのすぐ近くにある創作和食のお店だった









「イタリアンの方が良かった？」


『いえ、和食も大好きです』









お料理の盛り付けも味もどれも素敵で
さすがいい男はお店選びも違うな。
なんて心の中で変な褒め方をしていた




初めは緊張のあまり、それこそ
はい、いいえ
くらいしか言葉が出てこなかったけど

見た目とは違ってアキラさんはとても気さくで
ジョークも交えながら話をしてくれるので、お酒の力を借りながらもだんだんと緊張がほぐれてきた









『アキラさんも結構カルテット行くんですか？』


「うん、ちょっと飲みたいなって時は行くよ、弟の事も気になるしね」


『優しいお兄さんですね
弟のお店にいつも顔出してあげるなんて
仲良いんですね』









本当に心からそう思ったから、ただそれを伝えただけなのだけど
何故かアキラさんは少し気まずそうな苦笑いを浮かべている









「んー…まぁ俺の店だからね」


『…ん？』


「あそこ、俺の店なの。一応、オーナー』









ついさっきまで呑気に弟想いのお兄さんだなー
なんて思っていた自分が急に恥ずかしくなった









そういえば
直人さんには「いつもありがとう」と言っていたし
隆二はアキラさんに向かって「お疲れ様です」と言っていた





ちゃんとその時考えていれば
お店の人なのかなくらい分かったはずなのに






というか、
どうして誰もアキラさんと私が初めて話した時に、オーナーだと教えてくれなかったのだろう




いつもはお喋りが過ぎる程の直人さんも、臣くんも
隆二だって2人でいる時にでも教えてくれれば良かったのに、とあの時にその場にいた3人を恨んだ









『えええ…ごめんなさい、全然知らなくて！
てっきりアキラさんも常連さんだとばっかり思ってて…』









私の慌てようにアキラさんは肩を揺らしながら笑い「いつもご利用いただきありがとうございます」と冗談めかして挨拶をしてきた




慌てて『こちらこそいつもお世話になっております』と頭を下げたけれど、
まるで会社の取引先との様な挨拶に二人で思わず笑ってしまう

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