quartetto.

・ ページ23

・








『いえいえ、大丈夫です！
ただなんとなく飲みたくて寄っただけなので、
アキラさんに付き合わせるのは申し訳ないです』


「俺一回Aちゃんと飲んでみたかったんだよね、行こうよ一緒に。…嫌だ？」









こんな素敵な男性に上目遣いで誘われて断る人なんてきっと世の中にいないだろう








『嫌ではないですけど…』









そう言うとアキラさんもグラスに残っていたワインを飲み干して、お店を出る準備をする









今までこのお店ですらアキラさんと2人で飲んだ事は無いと言うのに、
いきなりカルテットとは違うお店で飲むとなると


さっきまで気付きもしなかった存在のアキラさんが急に眩しく見えた









今日も相変わらずオシャレなスーツをしっかり着こなしていて
スーパーモデル級のいい男









その横には隆二曰く、ムチムチの幼児体型な私









「Aちゃん荷物これだけ？」


『あ…はい』









私のバッグを持ったアキラさんの流れに任せて一緒にお店を出ようとする私に気付いて
遂に隆二が料理の手まで止めて私の元に走って来た









「え、ホントに行くの？」


『隆二どうしよう、私幼児体型なのにっ！』


「は？何言ってんの」


『イキナリで緊張するって言ってんの！』









声を殺しながら隆二に助けを求めると
その顔を見た隆二がふっと小さく笑った





こっちは笑い事ではないと言うのに
何がおかしいんだと眉間にしわを寄せると









また隆二の手が私の頬に触れて、
そして親指で優しく撫でられる









「じゃあ少ししたらこっち戻っておいで」









優しい声とその手の温かさにほんの少しだけ緊張が解れた気がした









『うん…そだね…』









夢の中の様に私を落ち着かせてくれると
隆二はアキラさんに声をかけた









「アキラさんすいません。
もうすぐ落ち着くんで、
それまでAお願いします」


「子供のお守りするわけじゃないんだから、
大丈夫だよ
しばらく返さないわ」



「…ちゃんと返してくださいね」









冗談交じりに言うアキラさんとは対照的に
得意のふにゃんとした笑顔１つ隆二は出さずにキッチンに戻っていった

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す