quartetto.

・ ページ13

・






その手がなんだか心地良くて
うっすら目を開けると
ベッドの縁に座った隆二が私を覗き込んでいた






夢の中と同じ
黒い髪が少しだけ目にかかっていて
髭を生やした隆二









『…なに、どしたの』


「何じゃねーよ、お前凄いうなされてたの
具合でも悪いのかと思って」


『え？ホント？…夢見てたからかな』


「どんな夢見たらあんな忙しくなるわけ？
うなされてるから心配して起きたら急にふにゃんって笑ってるし、ビビるわ」








夢の中で怖くて隆二に助けを求めて
そして隆二の手に触れられて安心した私がきっと寝ながらも笑ってしまったのだろう







それを隆二がずっと見ていたと思ったら急に恥ずかしくなってしまう









『どんな夢だったか忘れちゃった』


「Aちょっと仕事のストレス溜まり過ぎなんじゃない？
だから夢でもそんなうなされるんじゃないの？」


『…うん…そうかも』









ホントはそんな事ではなくて、
ただ昔の夢を見ていたのだけれど
それを隆二に言うのは照れくさかったので、
曖昧に返事をしながらベッドから起き上がった









いつも通りシャワーを浴びてメイクをして
簡単なお弁当を作って出掛ける支度をしてから
朝のニュースを見ながらコーヒーを飲む


泊まりに来ていても隆二はまだ寝ている時間なので、この時間はいつも1人だったのに
今日はソファの横に隆二が座っている









『今日早いね？』


「あんなうなされてんの見たら目覚めるって」


『ごめんごめん、昨日ワイン飲み過ぎたかな？』


「あれ他の男の前でやったらドン引きされるよ絶対」


『そんなに？えーお嫁に行けない…』









いつも通りなんて事ない会話のはずだったのに
急に隆二が私の顔を覗き込んできた









「夢に俺出て来たの？」

・→←あの頃と今

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す