quartetto.

・ ページ11

・





確かにこのスタイルが定着したのは
隆二が私の家の近くのカルテットで働くようになったからで
その頃からお互いに恋人がいないからだ





それまではお互いに恋人がいる時期もあったし、その時はもちろんお互いの家に泊まったりはしない


たまに実家で一緒にご飯を食べたり、お互いに何か用事があると連絡をしたりする程度だった







だからといって今のこの生活の半分を隆二が占めているような毎日も
全く不思議ではない
私にはむしろこの方が昔からのいつも通りだから









もし今私に彼氏が出来たら
きっとその人も他の人と同じ様にこの私達のスタイルを不思議に思って
そしてそれを嫌がるだろう





隆二に彼女が出来たとしても
その子もきっと他の女の家に泊まるだなんて、と嫌がるに決まっている








お互いに恋人が出来たら無理をしてまでこの生活を維持する必要はない
だからいつまでも続くわけではない








分かってはいるけれど、小さい頃からずっと一緒だった隆二の存在が遠くなるという事がいまいち想像出来なかった





心地良いとか、居心地が悪いとかそれ以前の問題
これが自然で、当たり前の光景だから









夜寝る前
布団の中で携帯を見ている隆二にふと聞いてみる








『私にこの先彼氏が出来たらどーする？』


「えー？んー…考えた事無かったな
なに、彼氏欲しいの？
婚期がどーとか言ってたもんな」


『いや、特別欲しいとは思ってないんだけど、さ』


「じゃその時まで考えないようにする」


『いや、考えなさいよ』


「んー…嫌かな」







料理の事となると真剣なのに
他の事に関しては面倒くさがりの隆二らしい答え




そもそもそんな直近の未来で起こりそうもない事だから
聞いたところで、それについて話したところでどうこうなる事でもない
それを隆二も分かっているから、考えようともしない


聞いた私がバカだったと後悔していると、すでに隆二は私に背を向けて寝ている様だった







『おーやーすーみー』







嫌味も込めて少し大きめなオヤスミを言っても返事がないので、私も寝返りを打つともう寝たと思っていた隆二がかすれた声で返事をした









「Aが婚期逃したら俺が貰ってあげる」









寝返りの途中だったから布団がガサガサと擦れる音でよく聞こえなかったけど
『はいはい』とだけ返事をして私も目を閉じた

あの頃と今→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す