quartetto.

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カウンターに並べられたワインボトルの向こうで、疲れ果てている私を面白そうに見ているのは

このお店の看板息子、臣くん









イケメン中のイケメンで初めて会った時は
この人はサイボーグか何かかと思った程

カッコイイのは見た目だけじゃなくて
ソムリエの資格も持っていて、
接客もとてもスマート



でも話してみるとちょっとどこか不器用で、憎めない可愛らしさも持っていて
女子からしてみれば放って置けない男の子









「キンッキンのビールでございます」


『ありがとう、いただきます
んあ゛ー染み渡るー…』


「オッサンみたいな声出すなよ」









大きい通りに面しているわけでもない
大々的に宣伝をしているわけでもない
古ぼけたビルの階段を降りて
その奥にひっそりと佇むお店


若い子が騒ぐようなお店ではないけれど
店内はいつも賑わっている







カウンター席には
ここで知り合って、ここでしか会わない常連さん同士がお互いの仕事や恋愛について
お酒を飲みながら語り合う








「Aちゃーん」


『あ、直人さん。地味にお久しぶりですね』


「ねー最近タイミング合わなかったよね」








会うといつも気さくに話しかけてくれて
年上のお兄さんとして私の愚痴もうんうん。と聞いてくれる常連さんの直人さん

カウンター越しの臣くんもたまに会話に入りながら
今日はビールと一緒に何を食べようかとメニューに目を向ける









「あ、やっぱり来たー
今日絶対来ると思ってた」









カウンター奥のキッチンから顔を出すのは
このお店のシェフ、隆二









『隆二の顔見に来てやってんの』


「嘘つけ。
今適当に作ってやるから待ってて」


『あーい』









隆二は地元が一緒の私の幼馴染
小さい頃はヤンチャなガキンチョで
その見た目からも怖くて近寄れないって言う子もいたけど



中身は優しくておっちょこちょいな天然





臣くんの横に立っても引けず劣らずないい男に成長したとは思うけど
小さい頃から双子のように育った私にしてみれば
隆二がイケメンと言われてもピンとこない









隆二は高校を卒業してから専門学校で料理を学んで
今じゃ立派なイタリアンシェフ

贔屓目に見ても
隆二の作る料理は本当にどれも素晴らしいと思う

味も見た目も繊細で、
でも気取っていなくて親しみやすい









『まるで隆二とは正反対で今日もステキなお味♡』


「イカ墨ぶっかけるよ？」

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