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「それは…駄目。うん、駄目だよ」
余裕を見せたいのに口角が上手く上がらない。でも、駄目なものは駄目だ。私なんかと一緒にいたって…。
「ふっかさんのことが好きだから？」
妙に落ち着いた声だった。
「深澤さんは…違う。というか、それが理由だから駄目って言ってるわけじゃないっていうのが、正しいかな。気持ちは嬉しいけど…」
「けど？…Aさん、ちゃんと話して。俺のこと好きになれそうもないなら、それでもいいから。駄目な理由を教えてください」
逃げないラウくんに、拍動がうるさくなる。
「ラウくんのことを好きになる資格がないからだよ」
今度は少しだけ笑えた気がした。
「何を考えてるんですか？」
「え？」
「違うな…」
ガシガシと頭を掻く。
「Aさんの本当の気持ちは？周りとか、体裁とか、そんなことじゃなくて、ちゃんと心にある言葉を聞きたい」
また…。一生懸命に閉じようとしている扉を、容赦なくこじ開けてくる。取り繕うことを許してくれない。開放されてしまいそうになる自分が怖い。なのに、どこか落ち着いたラウくんの声に安心して身を委ねてしまいそうになる。
そんな全てを感じて、一つ、溜め息とも深呼吸とも取れる息を吐いた。
「私はラウくんと並んで純粋にニコニコ笑っていられるほど素直に生きてない。人の気持ちを弄んで、汚いこともした。付き合ってもいない人に体を許して…。深澤さんのことも、駄目だって分かってて近付いて、真っ黒な嫉妬で酷い言葉を何度も思い浮かべた。私は汚い人間なの。
ラウくんと前にここの近くで会った時に気付いちゃったんだ。あぁ、私、何も持ってないやって。…持ってないっていうより、全部、もうどこかに置いてきたものだって。だから、」
「ねぇ、それマジで言ってんの？」
「え…」
遮られた言葉は読み取れないほど冷たく響いた。
「自分のこと汚いとか本当に思ってるんだったら、俺本気で怒りますよ？」
「なんでそんなムキになるの…」
「俺の好きな人のこと、そんな風に言わないでほしいから」
眉尻を下げて、困ったようにラウくんは微笑む。
「Aさん」
静かにゆっくり距離を詰めると、両手を掬い取られた。少しだけ力を込められる。
「俺のこと好きになって？」
「だから、駄目だって…」
「Aさんは綺麗ですよ。俺には勿体無いくらい。でも、どこにも行かないでほしい」
大きくて丸い瞳を見つめる。
綺麗な、濡羽色の満月のような瞳を。
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ありぃ(プロフ) - shirataman104さん» 前作に続きコメントありがとうございます！19歳のうちに完結する予定だった彼はリアルでハタチになってしまいました^^; お言葉に甘えてのんびり頑張ります！読んでくださっている方がいるのだと実感すると、やる気エンジンがかかります 笑 (7月27日 21時) (
レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
shirataman104(プロフ) - 前回も読ませていただき、今回も素敵な作品、じっくりと読ませていただいております^ ^ありぃ様のペースで、ゆっくりでもいいです！楽しみに続きを待っています^ ^ (7月27日 2時) (レス) @page48 id: 691ddf008e (このIDを非表示/違反報告)
ありぃ(プロフ) - lapis0216さん» コメントありがとうございます。まだまだ進展しない関係で楽しめているかな？と不安になっていたので、そう言っていただけてとても嬉しいです^^ これからもよろしくお願いします！ (2022年7月2日 23時) (レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
lapis0216(プロフ) - ドキドキしながら読み進めております(^^)更新、楽しみにしています！！ (2022年7月2日 23時) (レス) @page16 id: 597be45ed2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ありぃ | 作成日時：2022年6月9日 14時
