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「ちゃんと…」
話し始めた自分の声は、思っていたより小さかった。
「ん？」
「…ちゃんと、話したほうがいいですよ。うやむやは、後悔するだけですから」
鼻から息を吸って、吐く息に乗せて一気に言った。
この話を深追いしてはいけない、そんな気がした。
「なんて、私が言う立場でもなんでもないですけど」
だからもう終わり、と言わんばかりの雰囲気をわざと作って、ソファーに置いてある鞄を手に取った。
テーブルの上の、ペーパーナプキンの上にころりと転がった、あと少しのスコーンが目に入る。
あぁ…と思って、仕方なくもう一度鞄をソファーに置いた。
元々入っていた袋に、指を触れないよう丁寧に入れ直す。乾いた音がスタッフルームに響く。
「これ、」
と立ち上がり、持ち帰るかどうか聞こうとした。けれど、振り向いたその先の30センチも無い距離にいつの間にか深澤さんが立っていて。
後退りしようとしたのに、伸ばされた腕がそれを許さなかった。
強引に引き寄せられて、閉じ込められる。ほのかにスコーンの甘い香りが漂って、それさえも計算なんじゃないかと思えるほどだった。
両手で服の脇を後ろに向かって引っ張ってみたけれど、無駄だとすぐに悟る。
「なんで…」
口元に深澤さんの鎖骨が当たる。
「ごめん。ずるいんだって分かってる。でも…ごめん」
私は諦めて、抵抗せずに時間が過ぎるのを待った。こんな風に抱きしめられることになるなんて、思ってもいなかった。ときめきも、喜びもなかった。
「Aちゃんも俺から離れちゃう？」
「え…？」
やっと腕の力が解かれて、お互いに隙間ができる。無意識に一歩後ずさった。
「もうずるいついでだから話すけど。最近、俺のこと全然見てくれなくなったね。Aちゃんから好かれてるっていうの、結構大事なモチベーションだったのに」
少し不貞腐れたように話す。わざわざ、あえて話をされるのは居心地が悪い。
「……ラウが好き？」
黙ったままでいたら、また投げかけられた言葉に衝撃を食らう。深澤さんと目を合わせたのはいいけれど、今回は正しい答え自体が見つからなかった。
「ふーん…なるほどね」
「なにも…言ってませんけど」
ばつが悪いというのは、正にこんな時に使うのだろう。
私は深澤さんから目を逸らした。
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ありぃ(プロフ) - shirataman104さん» 前作に続きコメントありがとうございます！19歳のうちに完結する予定だった彼はリアルでハタチになってしまいました^^; お言葉に甘えてのんびり頑張ります！読んでくださっている方がいるのだと実感すると、やる気エンジンがかかります 笑 (7月27日 21時) (
レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
shirataman104(プロフ) - 前回も読ませていただき、今回も素敵な作品、じっくりと読ませていただいております^ ^ありぃ様のペースで、ゆっくりでもいいです！楽しみに続きを待っています^ ^ (7月27日 2時) (レス) @page48 id: 691ddf008e (このIDを非表示/違反報告)
ありぃ(プロフ) - lapis0216さん» コメントありがとうございます。まだまだ進展しない関係で楽しめているかな？と不安になっていたので、そう言っていただけてとても嬉しいです^^ これからもよろしくお願いします！ (2022年7月2日 23時) (レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
lapis0216(プロフ) - ドキドキしながら読み進めております(^^)更新、楽しみにしています！！ (2022年7月2日 23時) (レス) @page16 id: 597be45ed2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ありぃ | 作成日時：2022年6月9日 14時
