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Raul side
きっと、最初から散歩をしようなんて思ってはいなかったんだと思う。店から出てきたAさんの恰好は普通にオシャレをしていた。かろうじてヒールのある靴ではなかったけれど。
「俺、散歩って言ったら2時間くらい歩きますよ？」
「えっ、嘘。流石にそこまで考えてなかった…」
ちょっとだけからかってみると、慌てて俺と自分の服装を見比べている。
この際、部屋着のまま出てきたことは黙っておく。
「ホントだけど嘘です。ゆっくり歩きましょ。向こう側は小さなお店が並んでて、それぞれの灯りが雰囲気あって綺麗なんです」
慌てるAさんが可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「もう、笑わないでよ…。でも、ごめんね。何もかも付き合わせて」
「それは、ぜんっぜん気にしないでください。Aさんに会えてラッキーだから」
行きますか、と歩き出せば少し後ろをついてくる。
ゆるやかな湿った風と共に流れる空気に、何だかソワソワしてしまって、何度も後ろを振り返ってしまう。
察したAさんは苦笑いを浮かべて「どうしたの？」と聞いてきた。
「今日は、なんで散歩したくなったんですか？」
前を向いたまま聞いた。静かな時間が流れる。
いつ話してくれるか、その瞬間を聞き漏らしたくなくて、どんどん歩みが遅くなる。
どうしようかと振り返ったら、一人分くらいの距離が空いていたはずのAさんが、すぐ真後ろにいた。
「自分を大切にしようって、思ったから。かな」
意図は分からないけれど、そう思ってくれたことが嬉しくて「そっか…」と声に出したあとは頬が緩むだけだった。
「隣、歩いてもいい？」
こんな時はなんて言うのがカッコイイんだろう、なんて思ったところで分かるはずもなく。
「はい」
普通の返事をすれば、少し足早になって隣に並んだAさんは、俺を見上げて微笑む。
「今日、やっぱり1人じゃなくて良かった」
「そうですか？」
「うん。ラウくんといるほうがいい」
「…え？」
「あ、ねぇ、この道曲がってみたい」
ツンツンとTシャツの袖を引っ張られて、今の今まであった気持ちがまた違う意識に持っていかれる。
決して嫌ではない、笑いを含んだ溜め息をついて思う。役に立ちたいなんて思いながらも、結局翻弄されてしまうけれど。Aさんのためだったら何にも悪いことはない、と。
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ありぃ(プロフ) - shirataman104さん» 前作に続きコメントありがとうございます！19歳のうちに完結する予定だった彼はリアルでハタチになってしまいました^^; お言葉に甘えてのんびり頑張ります！読んでくださっている方がいるのだと実感すると、やる気エンジンがかかります 笑 (7月27日 21時) (
レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
shirataman104(プロフ) - 前回も読ませていただき、今回も素敵な作品、じっくりと読ませていただいております^ ^ありぃ様のペースで、ゆっくりでもいいです！楽しみに続きを待っています^ ^ (7月27日 2時) (レス) @page48 id: 691ddf008e (このIDを非表示/違反報告)
ありぃ(プロフ) - lapis0216さん» コメントありがとうございます。まだまだ進展しない関係で楽しめているかな？と不安になっていたので、そう言っていただけてとても嬉しいです^^ これからもよろしくお願いします！ (2022年7月2日 23時) (レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
lapis0216(プロフ) - ドキドキしながら読み進めております(^^)更新、楽しみにしています！！ (2022年7月2日 23時) (レス) @page16 id: 597be45ed2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ありぃ | 作成日時：2022年6月9日 14時
