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それから、言葉には出さなくとも、ぐんと距離が近付いたのを肌で感じるようになった。会話が極端に増えたわけでも、連絡を頻繁に取り合うわけでもない。ただ向けられる視線が優しくて温かいから、妙にくすぐったい気持ちになる。
「Aさん、待って。俺が行くんで、あっちのテーブルお願いできますか」
片腕を軽く引かれて制止される。二、三度の瞬きをして見上げていると、「さっき絡まれてたじゃないですか。そういう酔っ払い相手は危ないから駄目です」と、お会計を待つ数人の男性客の方へ向かって行く。
夜の時間帯はアルコールが入ると、いささか対応に苦慮する客がいるのは確かだ。もう働いて数年も経てば、交わし方も上手くはなるけれど気持ちのいいものではない。社員であるが故にバイトの女の子を守るため、間に入ることもある。
慣れたと思っていたけれど…。
これまでだって、目に余るものがあれば男性陣が対応してくれたことは何度もあった。特に深澤さんは、何を言うでもなく気付いたら隣に立ってくれて、上手く接客の主導権を替える。そんな姿に見惚れたのは言うまでもない。
でも…、と思って、入り口付近に目をやればラウくんが淡々とお会計をしている姿が目に入る。
面と向かって言葉にされるのは、また違った照れ臭さがあった。言い知れない気恥ずかしさが体の中に充満していく。
「さっきは急にごめんなさい。残ってることありますか？」
上から声が降ってきて、振り返り見上げると思っていた以上の近い距離に立っていた。「ん？」と、気にも留めない様子で私の返答を待たれる。なんで私のほうがドギマギしてしまうんだろう…。
「これ、俺が持っていきますよ」と、捲った白シャツの袖から程良く筋肉のついた長い腕が後ろから伸びてくる。
「ラウくん」
さっとその場を離れていく彼を急いで呼び止める。
「ありがとう。気付いてくれて、嬉しかった」
途端に頬を赤らめて視線を泳がせる姿は、やっぱり可愛い。
「俺は、Aさんがピンチになる前に気付ける男でいたいから。…安心してもらえるように。ちゃんと、見てます」
それでも柔らかな声に乗る言葉たちは、とても素直で真っ直ぐで、受け取るのに躊躇している余裕がないまま胸に届く。
「あっ、いや…でも、嫌だったら遠慮なく言ってください。距離感バグって、Aさんに嫌われたくないんで……」
強気なのか弱気なのか、相変わらず不思議なラウくんに、私の心は緩みっぱなしだ。
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ありぃ(プロフ) - shirataman104さん» 前作に続きコメントありがとうございます！19歳のうちに完結する予定だった彼はリアルでハタチになってしまいました^^; お言葉に甘えてのんびり頑張ります！読んでくださっている方がいるのだと実感すると、やる気エンジンがかかります 笑 (7月27日 21時) (
レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
shirataman104(プロフ) - 前回も読ませていただき、今回も素敵な作品、じっくりと読ませていただいております^ ^ありぃ様のペースで、ゆっくりでもいいです！楽しみに続きを待っています^ ^ (7月27日 2時) (レス) @page48 id: 691ddf008e (このIDを非表示/違反報告)
ありぃ(プロフ) - lapis0216さん» コメントありがとうございます。まだまだ進展しない関係で楽しめているかな？と不安になっていたので、そう言っていただけてとても嬉しいです^^ これからもよろしくお願いします！ (2022年7月2日 23時) (レス) id: 0d9038abf3 (このIDを非表示/違反報告)
lapis0216(プロフ) - ドキドキしながら読み進めております(^^)更新、楽しみにしています！！ (2022年7月2日 23時) (レス) @page16 id: 597be45ed2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ありぃ | 作成日時：2022年6月9日 14時
