その声に耳を澄ませて【黒】

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Ren side

「そういえば、こっちのメンバーに照くん入れたんだ」

「Aから声掛けられたら照も断れないよねー」


2人にしか分からない話題で盛り上がり始める。


「目黒にも丁度いいんじゃない？きっと勉強になるから」

「誰っすか？」

「私の部署にいる同期なんだけどね。見た目は怖そうだけど面倒見のいい人だから頼りになると思うよ」


Aさんが言うくらいだから優秀な人なんだろう。


「足手まといにならないように頑張ります」

「一緒にがんばろうね」


この穏やかな笑顔が近くにあるなら、まだ力不足な仕事も頑張れる予感がした。







共同企画が始まると、社内メールを使ってAさんがほとんどを仕切ってくれた。まだこういうことに慣れていない俺は自主的というより、先輩が仕事しやすいように頼まれたことを過不足なくやるので精一杯だ。
企画が出来上がれば双方の上司に確認してもらい、OKが出れば全体のプレゼンへと回される。しかしこの企画ばかりに構っていられないのが社員としての難しいところだ。
各々別に請け負っている仕事があるから、みんなで集まれるのはせいぜい週に１回程度。







大まかな方向性を決めたところで、初めての集合日を迎えた。


「みなさん、お疲れ様です。忙しい中ありがとうございます。では、早速なんですけど…」


Aさんはテキパキと場をまとめていく。

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話し合いが終わり、自分の資料をサッとまとめてからテーブル周りの片付けや整頓をする。部屋の隅で話しているのはAさんと先輩、それからもう1人。


「目黒くん、片付けありがとう」


俺の様子に気付いてAさんが声を掛けてくれる。
その自然な気配りに顔が綻ぶ。


「いえ、大丈夫っす」


手を止めて挨拶をすると、もう1人の同期と思わしき男と目が合った。


「あ、そうそう！この前ちょっと言ってた照ね。うちの若手の目黒。なんか必要あったら遠慮なく使ってやって」


先輩はなんとも雑な物言いをして、俺を紹介した。





「Aと同じ部署で同期の岩本です。よろしく」





一瞬返す反応が遅れたことには、気付かないふりをした。



「よろしく、お願いします」

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