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「千石君は私が、千石君がすごく頑張った事を知ってても負けた事実だけで千石君をカッコ悪いと思うような、女だと思うの?」
もしそうならば、私はすごく悲しい
そんな気持ちを込めて問いかけた。
こちらを向いた千石君は一瞬戸惑ったように、固まった。
次の瞬間ぎゅ、と突然彼に抱き締められた。
「…思わない。ごめん、Aちゃん」
「ううん、いいよ」
「あー、俺今ほんとカッコ悪い」
だから、こんな顔好きな女の子に見られたくないから、今は、抱き締めさせて
私の肩に顔を埋めて、途切れ途切れに彼は言った。
私は彼の背中に腕を回して、あやすようにポンと叩いた。
「Aちゃんは、かっこいいね」
「そんな事ない。私は千石君が一番かっこいいって思ってるよ」
彼は、私の肩にグリグリと額を押し付けるみたいにして首を振った。
「それこそない。…俺なんてまだ、全然ダメなんだ」
「そっかあ」
私はそうは思わないけれど、見かけによらず自分に厳しい彼はそう思うらしい。
私は苦笑する。
「…だからAちゃん、俺、ちゃんと自分で自分を認められるようになるまで、…Aちゃんを試合に自分で呼べるようになれるようになるまで、もっと頑張る」
「うん」
「それで、それが出来たら、君にちゃんと、言うから」
付き合ってくださいって、ちゃんと言えるようになるから
「だから、もうちょっとだけ、待ってて」
私を抱きしめる力を、少し強めて彼は言った。
顔は見えないけれど、涙声だからどんな顔をしているのかは容易に想像できた。
「…うん、ゆっくりでもいいよ。ずっと待ってる」
さっきはポンと背中を叩いた手を、今度は両腕を使って彼を抱きしめた。
大丈夫。私は君を待っててあげる。きっと、もうすぐそこだよ。君が、君を認めてあげられる日は、すぐに来るよ。
私の気持ちが全部、君に届けばいいと思った。
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作者名:かの | 作成日時:2017年3月28日 0時