・ ページ25
「ね、あとでクレープ食べようよ」
「お、いーな」
「それとね、...あ、」
前からやって来た若い男性の集団とぶつかりそうになる。切原は上手く避けた様だけど私はお見合い状態になった。
「わ、すみません」
「いや、こっちこそ」
混んでいるから仕方ない、とお互い分かっていたので、小さく謝って会釈して、行きあった。
前で待ってくれてた切原にも小さくゴメン、と言う。
「今の子見た?けっこー可愛い」
「それな、でも隣彼氏だろ」
遠ざかって行く彼らの声が聞こえて、何だか照れくさいような恥ずかしい様な気になる。だけどここで調子に乗ったら自意識過剰女みたいだから、忘れたことにしよう。そう思って切原の方に向き直ったら、何とも険しい表情をしている。
「え、どうしたの」
意味がわからないので私はただ驚くばかり。切原はわなわなと唇を震わせて、絞り出すように言った。
「やっぱ俺だけじゃなかった...!」
「え?」
「今のヤツら、お前のこと可愛いって」
それを聞いて私は言葉を失ってしまう。切原の言葉から考えられることは、切原も私のことを可愛いと思ってくれたということか。
切原もそこで自分の口走った言葉の意味に気が付いたらしく、はっとした表情になる。
「...今のは!違くて!!」
「えっ違うの?」
「いやっ違わねーけど、」
どうやら本当に思ってくれたらしい。直接言うような性格ではないのは分かっていたけれど、こんな形でこんなに嬉しいことを聞けるなんて。
思わず笑い出してしまった私を、真っ赤な顔をした切原が睨む。
「...調子のんじゃねーぞブス」
「ねえ、今ブスって全く効果ないの分かってる?」
照れ隠しってバレバレだよ。そんなバカなところも可愛いくて愛しいと思うのだけれど。
これからはもっと普通に、それからたくさん言ってくれると嬉しいな。私も、そう思われるようにずーっと頑張りたいよ。
切原が偶然にも口走ってくれたおかげで、私もいつもより素直に伝えることが出来て、切原はまだ少し赤い顔のまま返事をした。
198人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かの | 作成日時:2017年3月28日 0時