【テニプリ】君と始める恋物語part3【短編集】 (ページ16)

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2.

帰りのホームルームが終わって、放課後になったけれど、結局チョコレートは渡せないまま、今も私の机の横にかかっている。前の席の友人が鞄を持って立ち上がった。

｢じゃあ私、部活行くね｣
｢うん、頑張ってね｣
｢Aはどうするの？｣
｢...もうちょっとだけ、ここにいようかな｣

勇気が湧いたら、渡しに行くかも。その旨を伝えると、友人はフッと微笑んだ。

｢そっか。じゃあAも頑張って！｣

私の肩をポンポンと2度、応援するように叩いて友人は部活へ向かって行った。友人の所属する吹奏楽部と同じく、テニス部も今日も活動があるらしい。佐伯くんもすぐに教室から出て行ってしまった。幸い、教室からテニスコートが見えるため、ここにいれば部活の休憩時間や終了時間も把握できる。今日は一段と寒いから海の方へ行くこともなさそうだし、とりあえず様子を見よう。

結局部活の休憩時間も、佐伯くんは何人かの女の子達からチョコレートを差し出され、爽やかな笑みで受け取っていた。それを見て、１年生部長の葵君がたいそう悔しがっている。男子テニス部は基本的に人気のある子が多いので、悔しさもひとしおだろう。やっぱりまだまだ人が多いなあと思い、私の勇気は出なかった。

部活の終了を告げるチャイムがなる頃、テニス部のギャラリーは大分減った様だった。寒さに負けたのもあるかもしれない。
今なら...、と思って席を立った時、バックを持って部室から出てきた佐伯くんに駆け寄る女の子が見えた。雰囲気で、本気の告白だと気づいてしまって、足が止まった。あの子は多分、学年で一番可愛い女の子。
あの子も、佐伯くんのことが好きだったんだ。あの子の後に私、行けないや。
やっぱり、私に勇気なんて無くて、力が抜けてもう一度椅子に座り込んだ。深く1度ため息を吐き出して、荷物をまとめた。

｢...帰ろ｣

それで、このチョコレートは早く捨てちゃおう。