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▽▽▽
彼氏が出来た。同じクラスの男の子。前々から仲は良くて、よく喋る方。明るくて面白くて、でもたまーに優しい、そんな人。
なんとなく好きだな、と思っていたら向こうもそう思ってくれていたみたいで告白されて、付き合うことになった。
私の気もちを知っていた友人たちは、揃って祝福してくれたのと同時に、忠告もくれた。
「おめでとう。
でも、仁王君には気をつけなよね。あんた、顔はそこそこ可愛いから」
仁王君の噂は有名だった。彼氏持ちの女の子にしか手を出さない、カップルクラッシャー。
だけどこの時の私は、そんなのただの噂に過ぎないとしか思っていなかったのだ。馬鹿な私。
「はは、気にしすぎだよ。大丈夫大丈夫、近づかないから」
そんなことを言って笑い飛ばした数日後のことだった。
委員会の仕事を終えて1人帰ろうとしている時に、廊下で壁に寄り掛かっている人影を見つけた。
仁王君だ。
銀色に染められた髪が、夕日に照らされて輝いていた。
ーーー綺麗。
何が何だかよく分からないけれど、その二文字が心に浮かんだ。
その時伏せられていた仁王君の切れ長の目が私に向けられた。
突然目が視線が合ってしまった私は動揺して立ち止まる。
「…木下サンじゃな?待っとったぜよ」
なんで私の名前を知ってるの。なんで私を待ってたの。
これは、危険だ。頭の中で警報が鳴り響く。
だって名前を知ってるのも私を待ってたのも、理由が1つしか思いつかない。そう分かっていながらも、目の前で妖艶に笑う男があまりに魅力的で、目が離せなかった。
▽▽▽
あれから仁王君はしょっちゅう私を呼び出す。別に弱みを握られたわけでもないのに拒否出来ないのは、もう私の心が麻痺してしまっているからなのかも。
ごめんね。
彼氏への罪悪感なんて、あるに決まってる。
だけど誘惑に負けた私は、その罪悪感を打ち消すように求めるのだ。
忘れさせて。
夢中にさせてくれと。
私は、自分で選んでここにいる。
「…ねえ、もっかい、キスして」
「…」
仁王君は少し片側の唇の端を釣り上げて笑い、片腕で私の腰を抱き、もう片方の手は私の頬のあたりにやる。それから私は彼の首に腕を回した。
あーあ、厄介なモノに引っかかってしまったなあ。
だけど私はやめられない。彼氏のことは好きだ。だけどこの先もきっと、言い訳しながら仁王君からの快感を求めてしまうのだろう。
純心なんて、とうの昔に捨ててしまったのだから。
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作者名:かの | 作成日時:2017年3月28日 0時