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同窓会当日。会場がきちんとした場所だったので、新しく購入したワンピースを身につける。それからいつもより丁寧にメイクを施して、髪は緩く巻く。一昨日ネイルもした。
よし、これでバッチリ。
鏡の前でもう1度自分の姿をチェックしてから自宅のマンションを出た。
会場にはこの間電話していた友人と一緒に入る。しばらく共通の友人などを探したりしてお喋りに興じる。
その後はお互いの友人とも喋りたいだろうということで、別れて1人となった。
ということで自分のかつての部活仲間を探して会場を歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
「…A、か?」
はっとして振りかえると、白石君がいた。3年と少しぶりだ。
「白石君、」
あれ、なんか、緊張するな。
こうやってここで、私たちの物語は冒頭に戻るわけだ。
挨拶を交わしたはいいけど、少しぎこちない会話が続いた。
「えーっと、…元気、やったか?」
「、うん、元気だよ。白石君は?」
「俺はずーっと健康やで」
「そっか、…何より」
そういえば、健康グッズとか好きだった気がする。
当時の白石君との会話の記憶を懸命に辿ってみるけど、あまりたくさんは覚えていなかった。それどころか何だか昔のことを思い出そうとすると、気持ちまでもが蘇りそうで何だか怖いと思った。
白石君とは、ただのクラスメイトだった。…ただの、と言うには少し仲が良かったかもしれないけど。
私は彼が好きだったし、何となく彼も私と同じ気持ちだったのではないかと思うのだけれど、タイミングが悪かった。白石君の部活が大変な時期だったこと、同じく彼に好意を持っていた他のクラスメイトの女の子と私の関係性、多分私のことを想ってくれていた男の子の存在。
今となってはただの青春時代のほろ苦い思い出の1つのはずなのに。そう思っているからこそ、蘇らすのは怖いのかもしれない。
「A、キレイになったなあ。昔も可愛かったけど」
突然白石君がいう。
可愛いとか、そんなこと、中学生の時に言われたことない。そもそもこんな甘い声出せるなんて、私は知らない。
「っ、そんな、お世辞はいいから」
思わず顔が赤くなりそうなのを堪えた。
「お世辞とちゃうわ、気づいてへん?同級生ら、Aのことめっちゃ見よるで」
え、と思って顔を上げて当たりを見回すと、本当に何人かの男の子と目が合う。
何だか余計に恥ずかしくなってしまった。
赤くなった頬を見られたくなくて、思わず俯いた。
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作者名:かの | 作成日時:2017年3月28日 0時