【被虐のノエル】愛したい、愛せない【フーゴ・ドレッセル】 (ページ10)

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#7 普通じゃない前編ページ10

ドゴォン……

轟音とともに、市長の周囲に埃が舞う。
ちょうど市長の隣にあった本棚。それが何の原因もなく急に倒れこんできた(・・・・・・・・・・・・・・・・)のだ。
間一髪でかわすことに成功した市長は、何かを考え込むような顔をしてこちらを見ている。

『……うーん、難しいわね。やっぱり社交辞令の愛情じゃ大したことは起きないみたい』
「はぁ？なんで急に……いや、まさかお前……」

フーゴが何が起きたのかわからないと言ったような顔で私を見つめてくる。
その顔は徐々に、何かを確信した表情へと変わっていった。

「なるほど、お前……やっぱり気が狂った魔人だったってことか」
『フーゴにだけは言われたくないし、狂ってなんかない』

「どうかされましたか、市長！」と慌てたような声が聞こえる。
振り返ると、そこには眼鏡をかけた知的な女秘書が息を荒げて立っていた。音を聞いて急いで駆けつけたのだろう。よく見れば、後ろには警備員も沢山集まってきていた。

「ああ、シビラ。大したことはない。ただ、強風が吹いただけだ。ほら見ろ。風のせいで本棚が倒れてしまったんだ。今日は嵐の夜だったかな」

嘲るような顔をした市長がそう言って笑った。そして何事もなかったかのように、私に説明を求める。
“爆破事件のこと”と“この現象のこと”＿どちらの説明を求められたのかはわからないが、先に要件を済まして置いた方がいいだろうと思い、私はフーゴと出会った時のことを説明し始めた。