#37 怯まない ページ46
警官の男と素早く距離を置き、攻撃される隙を与えないうちにコートの内ポケットから手榴弾を取り出す。
フーゴに持たせてもらった破片手榴弾。知識を身につけ経験を積めば、炎に焼かれない身体を持つフーゴじゃなくても比較的簡単に扱えるものだ。
取り敢えず起爆はしない。威圧するために手に持つだけだ。
『たかが警官が1人でのこのこと……なめられたものね。私を誰だと思ってるの? 私は神風の魔女。ラプラスを震撼させる爆弾魔の片割れよ』
警官の中で私はボマーの仲間。ということは、私もフーゴの様な強力な力を持っていると思われている可能性が高い。
だとしたら、この脆弱な手札を晒さない限りは下手に攻撃できないはず__要するにはったりをかけて、逃げるチャンスを待つ作戦だ。
目の前に立つ警官の彼を見据える。
正面から見ると、彼はとても警官とは思えない格好をしていた。髪の左半分を十字のデザインに刈り上げており、ピアスも多数着けている。よく見れば、左目の下に顔ピアスまで着いていた。
__そして、風に靡く金髪は、何処と無くフーゴに似ていた。
『それに、ボマーを捕らえることは上層部からの謎の圧力で止められているんじゃないかしら? ここで私に手を出せばどうなるか、警察なら予想できるでしょう……?』
更に言葉を重ねる。
大分言っちゃまずいことを言っているような気もするが、まあ市長の名前は出してないから、ギリギリセーフ……だと思いたい。
これで彼が一旦引いてくれれば、いくらでも逃げようがあった。
……しかし、彼が放ったのは、予想を遥かに超えた言葉で。
「それが、なんだ……!」
直後、私の身体が大きく後ろに吹き飛んだ。腹部に与えられた大きな衝撃に、内臓が飛び出るような浮遊感。
腹を思い切り殴られたのだと気がつくまで、数秒の時間を要した。
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作者名:cc | 作成日時:2017年12月28日 10時