#33 使わない ページ42
逃げ惑う一般人を掻い潜って、まだ火が回りきってない物陰に滑り込む。
乱れた呼吸を整える。コートの裾についた煤を手で軽く払い、目を閉じた。
__トクン、トクンと規則的なリズムを奏でる心音が脳に響く。
目頭が熱い。すっと息を吸い込み、そしてやっと瞼をあげた。
その左右非対称の瞳に映るのは、先ほどまで目の前に広がっていた殺風景とは程遠い、眩しい場所。
転がる人だったものや、朽ちていく家だったもの。
そして、忙しなく動く黒い手袋。
右目の端で、何かが動いた。
意識を集中させてみると、盾を持って近付いてくる警官だということがわかった。
彼は…気が付いていない?
(…点火っ!)
私がそう念じると、警官は突如威力が強まった炎に呑まれていった。
その時になって、やっと視界が警官を中心に捉えた。
(本当に、戦いに夢中になると周りが見えなくなるのね)
私は1つ溜息を吐いて、感謝しなよ? と心の中で呟いた。
第3章 Please don't capture him
「……それで、A嬢はその力を具体的にどう使うつもりなのかね?」
私が大悪魔と第二の契約を結んでから、パイソン達はこの力に興味津々だ。
トードとスラッグに至っては自分たちもそんな力を得たいと契約に手を出しかけたほどだ。まあそんな度胸はないと彼ら自身も自覚したようだが。
『具体的にって言われると……まだこの力ちゃんと使ったことないし』
「試してみればいい。実戦で慌てるよりいいだろう」
そう言われ、私は手に入れた能力の一つ、視界の共有を試みる。
目を閉じて、強く念じる。使い方はなんとなくで理解できた。
『むー……見えろっ!』
目を開ければ、衝撃の光景が広がっていた。
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作者名:cc | 作成日時:2017年12月28日 10時