検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:129,225 hit

#2 解せない ページ5

振り返ると、そこには背の高い男が立っていた。
大量の手榴弾が引っ掛けられたカーキのジャケットが、風に吹かれて靡く。
深く被ったフードと顔を覆うガスマスクのせいで素肌は見えないが、それでもその正体は安易に想像できた。

『あんた、噂の爆弾魔……!』

私は敵意を露わにして彼を睨みつけた。

最近、市街地で不可解な爆破事件が多く発生している。
警察は情報を規制していたようだが、幾度も繰り返される事故から市民は「爆弾魔が出る」と噂をするようになったのだ。
……その後公開された情報によれば、噂もあながち間違いではなかったようだが。

「おいおい……そんなに睨むなって。そんなもんで爆弾魔である俺が爆破行為をやめると思うか?…もっとも、この出火に関しては俺の管轄外だけどな」

『……どういうことよ?』

避難勧告を出すのも忘れ、私は彼にそう問いかける。

「予定より2時間早い。お前の家に時限爆弾を仕掛けたのは俺だが、そもそもは上のやつの命令に従っているだけだ。あいつは隙のない完璧な作戦を好む。数分ですら駄目なのに、2時間もの誤差を許すわけがねぇ。……俺だって最悪、処分されちまう」

爆弾魔は声のトーンを少し下げ、そう語った。
彼の話には色々突っ込んで聞きたいところがある。
上のやつ? お前は自分で好きに爆破してるんじゃないの? そもそもその上のやつって誰? そんなに怖い人なの?
……一瞬にして様々な疑問が浮かんだ。でもそれを尋ねるのは後でいい。
まずは一言、言いたいことがあった。
私は息を大きく吸い込み、そして__

『結局あんたが仕掛けた爆弾のせいで燃えてんじゃん! 何が管轄外だよ!』

彼の鳩尾(みぞおち)に深く拳を打ち込んだ。

#3 謝らない 前編→←#1 予想できない



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (78 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
129人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:cc | 作成日時:2017年12月28日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。