#29 手を取れない ページ36
アメリアを引っ張り上げ、肩を揺する。
『アメリア、額から血が出てる……! 大丈夫!?』
「Aさん……? なんで、私を」
血を袖で拭い、彼女に笑いかける。
『あなたの過去を知って、放っておけるわけ無いじゃない』
アメリアは驚いたように目を見開き、そして私にもたれかかるように頭を下げた。
泣いているようにも見えるその顔は、血で汚れているのも気にならないほど美しかった。
両腕でアメリアの肩を抱く。
こんな悲しい人を、死なせることはできない。
今はまだ、無理かもしれないけど。
……いつか、一緒に笑えたら。
「私は、フーゴさんを、Aさんを、殺そうとしたのよ。どうして、そんなに優しくしてくれるの……?」
『そりゃあ、殺されかけたことは当分引きずると思うけど。フーゴも私も終わったことは気にしないタイプだからさ。……一緒に来ない?アメリア』
未だ動揺しているアメリアに、手を差し伸べた。
「Aさん、私、許されていいのかな……?」
その手を、アメリアが掴む__。
そんな未来が来ることを、信じていた、のに。
「……え?」
アメリアが私の手を掴むことはなく。
かわりにアメリアの背後に現れた軍服の異人が、彼女の赤髪を掴んでいた。
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作者名:cc | 作成日時:2017年12月28日 10時