幕間3 彼は届かない ページ34
Aの近くに駆けつけ、拘束具に手をかける。
頑丈そうな見た目に反して、案外脆そうだ。
力をかければ、簡単に壊れた。Aも所詮は脆弱だということか。
だからこそ、助けてやらねえと、こいつはいとも簡単に死ぬ。
四肢全ての拘束を砕いた後、これ以上空気を吸い込まないように口元を自身の胸で塞いだ。
Aの小さな身体を抱きかかえ、脱出の準備をする。
「これからここを爆破して出る。A!おい、目を覚ませ!無茶してんじゃねぇよ、A……!」
『フー、ゴ……?』
意識が朦朧としているらしい。このまま放置していたら身体が丈夫な魔人とはいえ死んでしまっていたかもしれない。
「待って、フーゴさん! ここを爆破したらどうなるかわかってるの!? ここはステラステージのラプラス支社付近! あなたたちと私3人の問題じゃ済まなくなるわ!」
「心配すんな。ステラステージはさっき俺が爆破しといたし、これはとっくの昔に市を巻き込んだ大きな問題だ!」
炎の中をなんとか走ってきた調剤の魔女が見当はずれの忠告をしてくる。
小さな爆弾を投げてやれば、アメリアは蹌踉めきながら後退した。
『私、フーゴの隣で……笑っていたかったんだ』
Aがモゴモゴと動きながら呟く。彼女がこれ以上空気を吸わないようにしっかりと抱きかかえ直した。
俺も大分呼吸が辛い。さっさと撤退することにしよう。
「火薬をたっぷり使った贅沢な爆弾、使ってやるよ。死にたいならそこにつっ立ってろ!」
ステラステージを爆破するために用意しておいた大型爆薬をセット。
さっきから咳が止まらない。息を止めて、Aを庇いこむ。
『堂々と、愛したかったんだ…』
「奇遇だな、俺もAを__。」
爆音。衝撃。
__落下。
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作者名:cc | 作成日時:2017年12月28日 10時