【被虐のノエル】愛したい、愛せない【フーゴ・ドレッセル】 (ページ28)

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#22 叶わない前編ページ28

父親はお医者さん。母親は大学の化学教授。
アメリア・リード……私の出生は、希望に満ち溢れたものだったわ。

私はそんな自分が誇りだった。そして、そんな両親の元で育つことが嬉しくもあったの。
そのうち、おくすりを作ることに興味を持ったわ。家庭環境的には、必然だったかもしれないわね。

そして、才能は私を裏切らなかった。天才と呼ばれ始めた私を、父様も母様も褒めてくださったわ。
やがて私は、国立病院に薬剤師として勤務し始めたの。17歳という、異例の若さでね。

自分が作ったおくすりで、人が助かる……こんなに嬉しいことは無いと、確信していた。
病人や怪我人を1人でも多く救いたい。それが私の夢だったわ。
でも、その夢はこの病院内にいる限り叶うことは無い。そう思い始めたのが、20歳の頃だったかしら。

そんな時、私にスカウトがかかったの！
遠い国で始まった紛争。流行る病に、絶えない怪我人。そんな地で、私を雇いたいって。
私の夢とみんなの願いが重なり合った。
この狭い病院内よりももっとたくさんの人が困っていて、その人々を私のおくすりで救えるのよ。自分が天才と呼ばれたことを初めて喜んだ瞬間だったわ。

喜んでその話を受けて、私は旅立った。
祖国を離れるのは寂しいけれど、いつかたくさんの人を救って戻って来る。
そんな決意をして、新地に降り立ったわ。

でも、そんなもの＿＿所詮、まやかしだったのよ。

買われたのは、私の人を治癒するおくすりの力じゃ無い。私のおくすりについての知識と、研究、調合の高い能力。
そして、人を傷つける劇薬の製造技能だった。

私はそんなことをするためにここに来たのではない。そう言って対抗したわ。でも、男たちは私の眉間に銃口を突きつけて、言ったの。
「言うことを聞かないと殺す」ってね。
しかも、私だけじゃなくて、祖国の両親や友人まで＿＿。そんなこと、許せるわけがない。
私は仕方がなく、そこで働くことになった。