【第４話】黄色の影 ページ7
Aside
落ち着いた私は、改めて彼に頭を下げる。
『すみません、ご迷惑をお掛けしました……』
「あー、それはいいんだけどよ……本当に大丈夫か？」
『はい、大丈夫です。ありがとうございます』
気遣ってくれる彼に笑みを向けてから、私は思い直して顔を引き締める。
いや、これではまだ足りない。
『あ、でも、そうですね。……もう一瞬だけ、時間を頂いても？』
「？ あ、ああ」
彼が頷きを返してから、私は瞳を閉じる。
――気合、入れないと。この馬鹿垂れな心に。
でなければ彼と、この世界とは向き合えない。
そう思うから。
スウ、と大きく息を吸い、両手を頬の前まで上げて……
『――ッ！！』
バチン、と両頬が平手で強く打ち鳴らされる音が、暗い岩の空間に響く。
「！？ おまっ、何やって……！？」
ジンジンと痛む頬に涙ぐみながらも、私は困惑する彼に笑顔を向ける。
『すみません、驚かせてしまって。ちょっと気合を入れたんです』
「気合い？」
『はい。……馬鹿で弱い自分のままでは、居たくないので。ここから無事に、貴方を帰すためにも……！』
「！ A……」
彼は見開いていた目を細め、私の頭に手を乗せる。
『……！』
「なんか、よくわかんねーけど……ありがとな。なんだかこっちも、目が覚めた気がするぜ」
『い、いいえ』
エドって、意識しなければ意外とこういうこともするんだな……。
っと、いけない！
気合いを入れたばかりじゃないか。
意識してしまいかけるのを、私はぐっと抑え、話題を戻した。
『え、と……それで、さっきの話なのですが』
「ああ」
彼が真剣な瞳をこちらに向けた、その時――
エドの背後で、黄色の影が揺れた。
『……！！』
暗闇の奥からゆっくりと現れたその姿に、私は心臓が止まりかける。
まさか、彼からここに来てしまうなんて……
「？ A、どうした？ ……何かあるのか？」
固まる私の視線を追い、彼は景色を見て怪訝な顔になる。
「話し声が聞こえるのはこっちかなぁ……あ！ やっぱりいた！」
「……は？」
周囲を見回していた瞳を一点に留め、エドは、あまりに信じ難いといわんばかりに、片手で額を抑えた。
一方、近づいてきた彼は、私たちの前で歩みを止めて――
「ハロー！ ボクはフラウィ、お花のフラウィさ！」
困惑する私たちとまるで正反対に、貼り付けた笑みを浮かべて、挨拶をしてきたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「Undertale」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アンテ民 - Hi(^-^)/そこら辺にいる雑草コト、アンテ民でこざいま〜す！((いやぁ〜大好きな鋼錬とアンテが掛け合わせに推しのかしわ様が描いていらっしゃるとね、分かった瞬間吐血しましたねﾊｲ(((更新頑張って下さい！！！ (4月15日 2時) (
レス) id: 677c09749a (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - 初コメ失礼しましたマジ天才です！！！！！こんな神作品をつくってくれてありがとうございますｯｯ！！！！！！ (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - マジ天才です！！！！！こんな神作品をつくってくれてありがとうございますｯｯ！！！！！！ (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
さささ―(プロフ) - 初コメ失礼します見ました！ものすごい面白かったです次の話が出るまで楽しみに待っています！ (6月22日 4時) (レス) id: 03f3eacb33 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ@低浮上気味本当にすみません……(プロフ) - 葛見さん» 葛見様、初めまして。そう言っていただけて大変嬉しいです……！更新が本当に遅くて申し訳ございません……頑張って書き続けますね……！ (2023年4月5日 17時) (レス) id: 850b2caf1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かしわ | 作成日時：2022年9月12日 21時
