検索窓
今日:9 hit、昨日:4 hit、合計:5,407 hit

――***―― ページ28

.


――“ずっと探したんだからね、兄ちゃんッ!”



そういえば、まだこいつが幼い頃は……俺を見失うと、いつも不安そうに俺のことを探して、追いかけてきたっけ。

あどけない足取りで、ぽてぽて、と音が聞こえるような仕草で。


そうして、俺を見つけた時に決まって見せた、目尻に涙まで溜めながらも心から安心したあの笑顔。
それが愛おしくて、ついついわざと隠れたこともあったな。


まだ、平穏だった世界で過ごしていた時の、かけがえのない記憶だ。



「(……こんな時に、思い出すなんてな)」



穏やかな記憶で、だからこそ胸が締め付けられる。



「……なあ、パピルス。お前はさっき、何か感じなかったか?」



思い切って訪ねれば、パピルスは首を傾げた。



「ニェ? 何のことだ?」

「……よかった」

「??」



あの違和感は、どうやら自分だけが感じ取れたらしい。
もし、こいつも感じ取っていたなら……きっと不安を募らせていたに違いない。

安堵して思わず呟けば、パピルスは、更に眉間の皴を深めるような動作をする。



「Heh、何でもないさ」

「? 変なサンズだな……。 ハッ! そんなことより、今日の見張りの現場はすぐそこでしょ? アンダインに怒られるのはオレさまなんだから、さっさと戻って!」

「ああ、わかった」



気付かなくていいんだ。
この苦しみを、こいつまで味わう必要なんてない。



「(とはいえ、やっぱり警戒はしておかないとな。……はぁ)」



俺はもう一度だけ、扉の方を振り返る。

もし、さっきの現象が、何かの前触れなのだとしたら……



ああ――今度は一体、何が起こるっていうんだ。



紫色のその扉は、冷たい雪の森の奥で、ただ静かにその身を固く閉ざしていた――

【第16話】手の温もり→←【第15話】ひとりの家族



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
24人がお気に入り
設定タグ:undertale , 鋼の錬金術師 , 夢小説   
作品ジャンル:ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アンテ民 - Hi(^-^)/そこら辺にいる雑草コト、アンテ民でこざいま〜す!((いやぁ〜大好きな鋼錬とアンテが掛け合わせに推しのかしわ様が描いていらっしゃるとね、分かった瞬間吐血しましたねハイ(((更新頑張って下さい!!! (4月15日 2時) (レス) id: 677c09749a (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - 初コメ失礼しましたマジ天才です!!!!!こんな神作品をつくってくれてありがとうございますッッ!!!!!! (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - マジ天才です!!!!!こんな神作品をつくってくれてありがとうございますッッ!!!!!! (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
さささ―(プロフ) - 初コメ失礼します見ました!ものすごい面白かったです次の話が出るまで楽しみに待っています! (6月22日 4時) (レス) id: 03f3eacb33 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ@低浮上気味本当にすみません……(プロフ) - 葛見さん» 葛見様、初めまして。そう言っていただけて大変嬉しいです……!更新が本当に遅くて申し訳ございません……頑張って書き続けますね……! (2023年4月5日 17時) (レス) id: 850b2caf1b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かしわ | 作成日時:2022年9月12日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。